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フェルチェ姫殿下の脱ヒッキー、あるいは新聞王増田憂作の似非ジャーナリズム


    (4)留め具

 ヒーロー光臨!
 悪いヤツらは許さないゾ!
 ミラクルパ〜ンチ!
 ドコッ! ビシッ! バキッ!
 待ちわびていたヒーローの登場に、歓喜した。
 もしかしたら、自分はこのまま、悪の組織に囚われて、この遊園地から一生、外には出られないのかも知れないという恐怖に、目を閉じ、ひたすらヒーローの名を心の中、繰り返していたのだ。
 白銀の肢体を煌かせたヒーローは、人質になっていた会場の子供たちを救い、悪の怪人どもを薙ぎ倒していく。テレビとおんなじだ。
 会場の少年少女たちは懸命にヒーローに声援を送る。
 自分も夢中で応援する。それっ! やっちゃえ! キック!
「楽しいかい?」
 両親が訊いた。
 頬を紅潮させて、コクンと肯く。スゴイ! やっぱり正義の味方っているんだねっ!
 父親の乾いた笑い声がした。

 いないよ。

 そう言った父親が、どんな表情をしていたかは逆光のせいでわからなかった。
「ホラ、見てごらん」
とヒーローの背中を指差した。
 ヒーローの背中で何かがキラリと光った。
「チャックがついてるだろ? あれは・・・」

 やめてくれ!

 ガバッ

「夢か・・・」


(つづく)

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