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妄想系で僧職系なのです


 小さい頃から漠然と、自分が寺を継がねばならないんだろうな、と自分も周りも思っていた。
 長女だし、父は心臓に病があって、いつどうなるかわからなかった。
 小学生のときは、無邪気に
 お坊さんになる!
って、どこか得意になっていたりもして、そういう発言をするたび、うそ?!と目を丸くする友人たちと、えらいねえ、と目を細める大人たちのリアクションが心地よくもあった。
 けれど思春期を迎えると、無邪気ではいられない。
 尼僧になるからには、それ相応の修行もしなくてはならない。恋愛するにしても、婿になってくれるちゃんとした男性を選ばなくてはならない。
 何より剃髪の必要に迫られる。
 これは、きつい。
 年頃の女の子が坊主頭になるのだ。剃髪は修行期間だけでいいらしいが、やっぱり抵抗があった。

 剃髪への拒絶感を決定的にする出来事がおきたのは、私が中学生のときだった。
 その頃、うちの寺に通ってくる女の人がいた。
 房枝さんという三十代後半くらいの女性で、ちょっときれいな人だった。房江さんは我が家を訪問するときは必ず着物だった。長い髪を着物に合わせてまとめ、アップにしていた。色白で細面の房江さんに和装はよく似合っていた。艶やか。優雅。そんな形容詞がぴったりの大人の女性だった。
 房江さんは在家の人だったけど、あるとき不意に尼僧になりたいと思い立ったという。尼僧になるには師僧が必要なので、誰か適当な僧侶はいないかさがしていたところ、知人がうちの檀家だったので、その伝手を頼って、父に出家を願い出たそうだ。
 ――お寺の子でもないのに、お坊さんになりたがる女の人もいるのか。
とその頃、敷かれたレールに鬱モードになっていた私は、奇異な生き物でも見るような視線を房江さんに向けていた。
 房江さんは半年ぐらい、お経やら僧侶の心得やらを父から学んで、いよいよ得度することになった。
 房江さんが得度するとなっても、私には別段何の感慨もなかった。
 何故なら、得度なら私もすでに済ませていた。
 中学にあがる際、本山で受けた。私の他にもお寺の奥さんや娘さんが一緒だった。いわゆる寺族得度というもので、えらいお坊さんが、剃刀をチョンチョンと得度者の髪にあてて、法名を頂く、ごく形式的なものだった。
 その日から私は法門的には、
 三宅静心
という尼さんになったわけだけれど、そんな自覚はない。ただの三宅静のつもりでずっと生きてきた。
 房江さんも剃刀チョンチョンと一応の法名だけで得度をすませるのだろうと、勝手に思い込んでいた。父も形だけのつもりだったらしい、
「そんなに堅苦しく考えなくていいから」
と前の晩、房江さんに言っていた。
 が、得度式の朝、玄関に現れた房江さんは黒の道服を着、それまで伸ばしていた長い髪をバッサリと切って、丸坊主になっていた。
 皆、肝を潰し言葉もなかった。
「昨夜、あれから床屋に行って、電気バリカンでバサッとやってもらいました」
と房江さんが、ホホホと笑いながらなでる丸刈り頭を、私は肌が粟立つ思いで見ていた。
 「バリカン」ではなく「電気バリカン」という房江さんのいささか古めかしく、いかにも床屋慣れしていない感じのする具体的な単語が、ビビリな私の恐怖心を強く刺激した。
 うまい例えか不安だけれど、例えば怪談を聞くにしても、提灯とか武家屋敷とか下駄の音とか汲み取り式トイレという前時代的な舞台装置だと、さほど怖くない。
 ところが病院とかタクシーとか舞台設定が現代的だと、妙にリアリティがあって、話に引き付けられる。
 剃髪にしても、このときまで私が読んだことのある漫画版「源氏物語」だの「北条政子物語」だのの尼僧の出家シーンは、メルヘン的な美に彩られていて、自分の未来とは直接結びつけられなかった。
 しかし房江さんのケースは
 床屋。電気バリカン。
という道具立てが生々しい。いかにもありそうな話だった。
 しかも、坊主頭の房江さんは有髪のころは、ちょっといい女だったのに、頭を丸め、地味な道服を着ると、器量はひどく落ちた。「昭和の日本人」的体型も目立つ。薫るような色香はすっかり失せ、ヌカミソ臭そうなオバサン尼僧になってしまっていた。
 この外見のネガティブな変貌ぶりが、いかにもリアルで、何年かしたら房江さんと同じ外見になる運命の星の下に生まれた私は暗澹たる気分にならずにはいられなかった。
 ただ、
「さっぱりしたわ」
とせいせいした顔で笑っている房江さんが心に残った。

 高校生になり、私が僧職に対してますます腰がひけるのに反比例するかのように、両親や周囲の期待は強くなっていった。
「しっかりしてるね」
と私の大人びた振る舞いに笑みをこぼす檀家さんは、きまって、
「これでこの寺も安泰だねえ」
と付け加えるのを忘れなかった。
 両親は、けして「尼になれ」とは言わなかった。
 その代わり、
「早いうちに行っておいた方が後でバタバタしなくていいぞ」
と尼僧修行のことを口にした。
 つまり尼僧になる、ならぬ、という決断の段階はもうとっくに過ぎていたのである。皆、私が尼になると決めてかかっていたし、私もそれは仕方ないと諦めていた。長女気質ってものなのか、親や周囲の期待に応えねばならないと自然に考えていた。
 ただ、実際に修行に行くという話になると、今は資格の勉強をしてるし、だの、大学を出てから、だの、言を左右にして、ズルズルと先送りにしていた。
 その間、業を煮やした両親が私の剃髪を強行してしまうのではないか、という根拠のない不安が心に影をおとしつづけていた。
 このころ、よく見ていた夢がある。
 髪を剃られる夢だった。
 両親が、あるいは恋人や友人が、あるいはモンスターみたいなものが、泣き叫ぶ私をおさえこみ、手にしたバリカンで無理やり私の髪を刈る。私は泣きながらも、必死で抵抗するが、刈られた髪はバサバサと落ちていく。
 目がさめて、ああ、夢だったか、と安堵のため息をもらす。けれど、すぐに二度目のため息が出る。二度目のため息は失望のため息だ。
 悪夢は終わっても、髪を剃らなくちゃならない現実はしっかりある。
 テレビのバラエティで若手の芸人が罰ゲームで坊主にされてたりするのを、妹などは笑って見ていたけど、私は笑えなかった。他人事とは思えなかった。
 友人たちと話しているとき、誰かの口から「坊主」「バリカン」という単語が出ると、ビクッとなってしまう。一種の条件反射といえる。
 ある神社にお参りしたとき、手を合わせながら、
 ――ボーズは嫌です! ボーズにならなくて済みますように!
と祈った。もちろん大真面目だった。
 ほとんど強迫的なまでの坊主頭への嫌悪が、高校時代、大学時代にはついてまわった。

 だけど、私もおさめるべき年貢をおさめなければならない。
 いつまでも逃げ回っている自分も情けなく思う。
 大学卒業を控えたある日、両親が持ち出した何度目かの修行行きの話に、覚悟をきめ、うなずいた。
 剃髪に関しても、腹をくくらざるを得ない。
 何気ないふうを装って、母に、
「私、ボーズ似合うかな」
と作り笑いしながら訊いてみた。
「あら?」
 母はちょっと虚をつかれた表情をしたが、やがて笑い出した。笑いながら、
「大丈夫よ」
と娘の背中をポンポン叩いて、
「頭は剃らなくてもいいのよ」
「え?」
 意外な言葉にキョトンとする私。
 母の話では、私が修行する道場は、尼僧は有髪でもいいとのことだった。
「何年か前までは女の人でも頭剃らなくちゃいけなかったんだけどね――」
 時代の波に合わせ、最近、尼僧の有髪が認められたらしい。
「ああ、そうなんだ・・・」
 拍子抜け。
 十年の苦悩は一瞬で解消されたのだった。

 ――なんでだろう・・・。
 その夜、ベッドの中で寝返りをうちながら、私は不思議だった。
 ずっと嫌がってきた坊主頭への不安がなくなったのだ。ラッキー!と狂喜乱舞すべきところだ。なのに、昼間拍子抜けしたまま、テンションがあがらずにいる。どころか、何故かガッカリしている自分がいて、戸惑ってしまう。
 せっかく剃髪しなくていい状況になったのだ、喜べ、と自分の心を揺すってみるが、なんだろう、なんで私はチャンスでも逃した気分になっているのだろう。
 どうも私の心の中にはアマノジャクが住んでいるらしい。
 大学の卒業旅行で、友人たちと行ったアメリカでの出来事についてもそうだ。
 ある遊園地のアトラクションでバンジージャンプをやっていて、友人の中の物好きが
「やってみようか!」
とハシャぎ出した。当然、何十メートルもの高さからバンジージャンプなんて、絶対やりたくない。
「やろうよ!」
と友人はしつこくすすめてきたが、私は、
「嫌だ! 絶対イヤッ!! 私やんないからね!」
と懸命に断った。結局、その友人と説得されたもう一人の友人のみがバンジージャンプに挑戦した。
 ホッとすると同時に、心のどこかで、
 ――せっかくだったし、やっておけばよかったかな。
と後悔している自分がいた。帰りの飛行機の中でも、ずっとそのことを考えていた。
 そのときの気持ちと似ている。
 さらに下手な例えをかぶせると、苦手な男の子にガンガン、アプローチされて、当たり前だが、キモッ、絶対いや、来ないで!と怖気が走る。ところが、いざソイツが自分をあきらめて、他の女の子へ行ってしまうと、
 あれ?
って、多少のさみしさはある。でも、そのさみしさを認めたくない気持ちもある。それに似た気持ち。
 剃髪しなくちゃならない、って強制されると、「死んでも嫌だ!」と激しい拒否反応がおこるが、その強制が消えた途端、肩すかしを食らって、
 ――1回くらいボーズにするのもアリだったかなあ。
と贅沢なさみしさをおぼえているアマノジャクな自分がいる。あるいは、俗に「嫌よ嫌よも好きのうち」ってやつで、剃髪を嫌悪する正常な私の裏側で、剃髪に惹きつけられているMな私も存在していたのだろうか。
 もはや剃髪の必要がなくなった今、私は心置きなくそうしたMな私を認めることができた。
 Mな自分を成仏させてやろう。そう自分に言い訳して、私はその夜、はじめて坊主にされる妄想をした。
 もうすぐ修行なんだから、さっさと床屋へ行ってこい!
と父に叱られているifワールドを妄想して、ものすごく昂奮した。床屋は近所の正岡理髪店という設定にした。
 バリカンの音や感触、正岡のオジサンの情け容赦ない仕事ぶり、刈られている間、他の男性客から注がれる好奇と好色入り混じった視線、いろいろ想像して、さらに昂ぶった。元々妄想系だし。
 客の中に中学時代の元カレ、とか、床屋からの帰路、バッタリ会った檀家の小学生に「あ! お寺のお姉ちゃん、ハゲてる」と驚かれ赤面、とか妄想はどんどん足し算されていき、たまらず明け方まで自分を慰めてしまった・・・。
 M子を成仏させるどころではない。
 この夜、ベッドの中で剃髪フェチ三宅静は覚醒してしまったのだった。

 数ヶ月の修行を終え、私は寺に入った。
 見習い僧侶としての日常がはじまった。
 私の中には、「普通の女の子」、「僧侶」、「剃髪フェチのM女」、の三者がたしかに存在していた。
 そして、三者のうち、僧侶とM女がスクラムを組みはじめた。
 ある日、法要のとき、ちょっとした不手際を演じてしまい、父にかなり叱られた。
 ムシャクシャした。庫裏に戻ったら、母が使っている等身大の鏡に、有髪に袈裟姿の自分がうつっていた。ガリガリと乱暴に髪をかきながら、鏡を睨み据え、
「いっそサッパリとボーズにしちまおうかな」
 ことさらに乱暴な口調で吐き捨ててみる。どきどきする。別に聞かれたって構わない。尼さんが「坊主にしたい」って放言しても、不自然じゃない。
 あえて人前で剃髪の話をしたりもする。
 檀家の総代さんに、
「ボーズにしようかなあ、って思ってるんですよね」
 言いながら自分の言葉に昂奮する。
 総代さんは菩提寺の次期住職の僧職への入れ込みぶりに、好意的な微笑を浮かべ、
「いいって、いいって、女の子なんだから」
「そうですか? でも尼さんがこんなふうに髪伸ばしてたら、サマにならないじゃないですか」
とうるさそうに髪をかきあげてみせ、
「バリカンでバッサリ刈ろうかなあ」
 言いながら、濡れた。一般人にそれとは気づかせないで、フェチ的な話をするスリル。
 友人にも剃髪の話をする。
「別に他に仕事してるわけじゃないしね、頭、ボーズにしようかな、って考え中なの」
 友人は、え〜?!って驚きつつも、
「いいねえ」
 面白そうに首肯する。
「剃っちゃえ剃っちゃえ。バリカンでブイーンと」
「ゼッペキだったらどうしようかなあ」

 有髪で大丈夫
という安全地帯だからこそ、心置きなく妄想ができる。十代のころ、二十代のはじめ、ずっと抑圧してきた坊主願望を解放できる。
 普通、妄想は所詮妄想のままだ。
 坊主願望のある女性だって、せいぜいツーブロックにするくらいで我慢するのが関の山。
 でも私は尼僧。
 女がナチュラルに坊主にできる唯一の職業。
 妄想を現実にできる環境にいるわけだ。
 さすがに、じゃあ明日にでも坊主に、って具合にはいかない。したいんだけど・・・やっぱり女の子なわけで・・・ね、いつかは実行したいけれど、そういうのは勢いがないと。
 ただ、
 したければいつでも坊主頭になれる
という権利を保持して、有髪の安全圏で妄想を膨らます。こんな甘美な境遇はまずない。
 いろんなシチュエーションも思い描きやすい。
 例えば――
 本山の重要な儀式に参加する。
 厳格な老尼僧にロングヘアーを咎められる。
 なんですか! 尼僧がそんなに髪を伸ばして!
 衆人環視の中で激しい叱責を受ける私。
 周りの剃髪僧尼たちの冷ややかな視線がグサグサ突き刺さる。
 バッサリ丸めてらっしゃい!
 裁きが下る。
 早速、断髪式が決行されることに。
 バリカンを執るのは、男僧軍団。
 男僧軍団はM大(仏教系の大学)出身者たち。こんなことを言うのも気がひけるけど、あそこの大学出身の僧侶は、体育会系のバカ揃いと宗門でも評判。ゆえに尼僧だろうと構わず、蛮カラなノリでバリカンを入れてくるだろう。五、六人で入れ替わり立ち代り、モヒカン〜、とか遊ばれたり、散々イジリ倒された挙句、坊主頭完成。
 そんな妄想に昂奮し、一人Hにふける。
 妄想によく御出演願うのが、菅沼長慶さんてお坊さん(♂)
 長慶さんは修行時代、尼僧の指導を担当していた。割とカッコ良かったけど、四角四面の堅物で怒りっぽくて、修行尼僧の間でも好き嫌いが分かれていた。私はかなり好きだった。
 この長慶先生にアタックという妄想・・・
 菅沼先生、あの・・・今度飲みに行きませんか。
 なんだ? 修行生の同窓会なら別に俺が参加せんでもよかろう。お前らだけでやればいいじゃないか。
 つれない長慶先生に、二人で飲みませんか。好きなんです!と女学生のように告白。
 バカヤロウ! 有髪の半端尼僧のくせにチョーシに乗るな! 俺に抱かれたいんなら、まずその目障りな長髪剃って出直して来い!
 あわててひきさがる私。長慶先生のオラオラなアンサーに、すぐに床屋に直行。
 ウィーン、ウィーン、ジョリジョリ、バサ、バサ
 坊主頭で再アタック。
 あの尼さん、長慶サンとのH目的で頭丸めてやんの。
 煩悩まみれの私に周囲の目も冷たい。
 でも、長慶先生は前日とは打って変わって優しく私の誘いをOKしてくれる。
 夜の長慶先生は昼間とは別人。
 Hが終わったあとも、ちゃんと愛撫してくれる。主に坊主頭をチュッチュッと。

 現実は妄想と違って、ユルい。
 有髪について、檀家も周りのお坊さんも何も言わない。
 本山にも何度ものぼったが、有髪に対する物言いは特につかない。有髪の尼さんは今時普通にいるし、当然と言えば当然なんだけど。
 多少物足りない。
 一応、自分的に頭を丸めるチャンスは幾度かあった。それは、副住職になったときだったり、僧侶の研修会のときだったり、重要な儀式のときだったりした。
 区切りをつける。気合を入れる。剃髪の尼さんも大勢参加されている。口実はいくらでも思い浮かんだ。
 ギリギリまで「剃るぞ剃るぞ」「バリカンでバッサリと」「ツルツルにして」「皆を驚かせてやる」と毎晩のように心臓をバクバクさせているのだが、いざとなると、実行できないままだ。
 髪は背中まで伸びている。黒髪のストレートだ。なかなか剃りごたえのある長さ、ボリューム、傷み具合だ。一気に坊主頭に刈ってしまったら、えもいわれぬ爽快感だろうと胸が躍る。
 まあ、坊主頭になったら、さぞイケてない感じになるだろう。
 それがネックだ。でもそこに私の内なるM女は昂奮してしまう。
 誰かに背中を押して欲しい。
 子供のころはロングヘアーに目くじらを立てる人間がいっぱいいた。
 短くしちゃえよ、という親戚のオジサンとか
 夏なんだから切ればいいじゃん、とすすめてくる短髪の女友達とか
 ちょっと髪長いんじゃないか、と指導してくる教師とか
 大人になると、たとえ尼さんだろうと髪型は自己責任、誰も口出ししてこない。
 そう考えると、得度式の前夜、自主的に髪にバリカンを入れた房江さんはすごいなと思う。
 などと、ユルい現実に流されているうち、私ももう二十八歳。すっかり僧侶業も板についた。今では父の代理で檀家参りもする。
 尼僧になってから、まだ男性とちゃんとお付き合いをしたことがない。
 けしてモテないわけではない。
 むしろ、男ばかりの宗門において、希少価値のある若い尼僧はちやほやされる。地元の仏教青年会などに顔を出せば、若い男のお坊さんたちがひっきりなしに接触してくる。そういったお坊さんたちの中の何人かとは、食事をしたり、ときには同衾することだってある。でも、たいてい一夜限りの関係に終わる。特別な異性の座はずっと空席のままだ。
 自分でも、
 ――なんでだろう?
と恋愛に費やす情熱をセーブする心理がわからずにいたが、あるとき、
 ――もしかして・・・
 ふと思い当たる理由が浮かんだ。
 仮にステディな関係の男性がいたとしたら、その彼はたぶん、いや、絶対私の坊主願望の実現を阻止しようとするに違いない。常識的に考えて、自分の彼女が坊主になるのをノーマルな男が許すはずがない。坊主の許可を得るために、かなりの説得が必要になるだろう。
 フェチ的な欲望を遂げるのに、彼氏という存在は邪魔だ。
 それに薄々気づいているから、私は恋愛に関して消極的なのだろう。
 私のプライオリティは幸福な恋愛より、アブノーマルな欲求の成就なのだ。

 とは言え、実行の目途はたたない。
 妄想は驚異的な勢いで膨張していく。
 電気屋に行けば、必ずバリカンのコーナーをチェックする。
 床屋の前を通るとき、さりげなく店内をチラ見する。小学生の男の子が刈られてたりすると、うおお!と興奮する。
 動画サイトで外人女性の剃髪動画を再生しては、オウ、マイガッと嘆息しながらボウズにされる女性に自分をシンクロさせて、バリカンカットを疑似体験してみる。
 ロングヘアーの自分を鏡越しに睨みつける。チキン。半端者。潔くないぞ。度胸がない。大して美人でもないくせに髪でごまかしちゃってさ。心の中で思いつく限りの悪態を有髪姿に浴びせかける。
 近頃は坊主の口実になるスケジュールもない。
 ベッドの中で何十もの坊主シチュエーションを考え出しては、自らを慰めていた。

 そんな二十八歳の夏のこと、例によって父の代理で遠い街に住む檀家を、盆参りのため、訪ねた。
 この日は特別この家以外に仕事はなかったので、お経を読み終えると、家の人たちと、しばらく談笑していた。
 そうしたら、この家の小学校二年生になる息子が、不意に、
「ねえ、お姉ちゃん」
と話しかけてきた。
「なあに?」
「あのさ」
と少年はしげしげと私を見つめて、
「お坊さんなのに、なんで頭、坊主じゃないの?」
「え?」
「なんで坊主にしないの?」
「それはね――」
 返答に窮している私に、少年はこの年頃の子にありがちな、相手が王様だろうと裸と言い切ってしまうような無遠慮さで、
「頭、坊主にしちゃえばいいのに」
 ウィーンとバリカンの口真似をして、空気のバリカンで私の頭を刈る真似をした。
 ――うはああああああ!!
 コレコレ、お前は引っ込んでなさい、と無礼なチビ助は部屋から追い出された。
 しかし、私の下半身の花園は、すでに甘い蜜をほとばしらせていた。自分の女の命を残らず身体から切り離してしまいたい衝動が、全身を駆け巡った。

 帰路、まるで誘蛾灯に引き寄せられる羽虫のように、私はフラフラとこのよく知らない町の小さな床屋に車をとめていた。
 片倉理容店
と店の看板が出ている。そこそこ小奇麗な理髪店だった。
 「小学二年生の鼻たれ小僧に注意されて頭を丸める副住職(尼僧・二十八歳)」
 この情ないシチュエーションに、私の中に住むM女は、たまらなく歪んだ喜びを感じていた。
 ドアを開ける。カランカラン。
 プ〜ンとヘアトニックの匂いが鼻をつく。初めて嗅ぐ床屋の匂い。
「いらっしゃい」
 熊みたいなオジサンがいた。薄緑色のユニフォームを着ている。店主らしい。理髪師よりペンションのオーナーが似合いそうな風貌だ。
 店内を見渡す。
 他に客はいない。
「どうぞ」
と武骨な手で招かれた左側の理髪台に腰をしずめる。白いケープを巻かれても、どれくらいの短さにするか、実はまだ決めかねていたのだが、
「坊主?」
 いきなり訊かれた。
「え? あ、は、はい」
 あわててうなずきながらも、
 ――あれ?
 何か釈然としない。
 私のなかでは、女性に剃髪を注文されて目を白黒させる床屋に、「いいんです! バッサリやって下さい」の決め台詞を出す予定だったのだが・・・。
 確かに袈裟姿なので、先方も尼僧と気づいているだろう。けれど、いくら尼さんの客だからって、皆が皆、坊主頭にしに来店するとは限らない。いきなり「坊主?」は不躾だろう。
 心なしか、「坊主?」という店主の訊き方には、坊主以外のオーダーを許さない迫力があった。
 はからずも機先を制されてしまった。
 この瞬間、私の六年におよぶ坊主計画は、この少々デリカシーのない田舎理髪師にジャックされたのだった。
 シュッシュッと霧吹きで髪が湿される。ジャカジャカと髪をかきまぜ、水気を全体に行渡らせている店主に、
「あの・・・」
「なに?」
「2センチくらいの長さで・・・」
「2センチ?」
と店主はひどく不満そうだ。
「尼さんでしょ?」
「はい」
「だったら、潔くツルッといっちゃおうよ」
「で、でも剃刀で剃ると頭、ヒリヒリするから・・・」
「それは下手な床屋の場合。俺の腕なら心配いらない」
「そ、そうですか、じゃ、じゃあツルッとお願いします」
 店主のペースにハマってしまっている(汗)
「あいよ」
 スッと大きな散髪バサミを取り出す店主。
「あ、あの・・・」
とDV夫の機嫌をうかがう主婦のような声音になっている私。
「鋏じゃなくて、バリカンでバア〜ッとやっちゃって下さい」
 勇を鼓し、希望をリクエストした。
 が、
「こんなダラ〜ンと長く伸ばしてる髪じゃ、最初からバリカンじゃ刈れない」
 あっさり却下された。「ダラ〜ンと長く伸ばしてる」という表現に悪意を感じる。長い髪にも、これまで伸ばしてきた私にも。
「じゃあ、やるよ」
 やめる気ゼロのくせに、あえて念を押してくる店主に、
「あ、はい」
とうなずく私。「普通の女性」の部分は、パニックになっていて、「M女」の部分は歓喜にうち震えていた。
 もうなりゆきに任せるしかない。
 俎板の上の鯉状態の私のトップの髪が店主の指に挟まれる。スイと持ち上げられる。指からはみ出て、クッタリ垂れてる髪を、店主がシャキシャキ、シャキシャキと切る。
 美容室でのカットと大差ない。拍子抜け。妄想していた、いきなりバリカンで前頭部をガー、とか、でも、
 ――まあ、こんなもんなんだろうな。
と思う。
 だが、この生温い失望も、サイドヘアのカットになると、
 ――ひいいい!!
 コームで下から上へ、一気に梳き刈りにされる。
 ザーッとコームで髪が梳きながら、
 ジャキジャキジャキジャキジャキ
と根元から刈られる。
 ブワッ!!
と刈られた髪が宙を舞い、跳ね踊る。
 ――あら?
 あまりの見事なワザに呆然となる。
 すっきりと刈りあがったサイド。首が寒い。年中していたマフラーをぬいだようなものだ。後ろの景色がやけにクッキリ広がった。
 店主、さらに容赦なくモミアゲを刈る。下から上に刈る。ジャキジャキッ。金属の刃がこめかみに触れる。冷たい。モミアゲが消えた。
 カット開始からわずか十秒で左半分をスポ刈りにされた。
 右半分も同じ要領で、梳き刈り。ジャキジャキジャキジャキジャキ! 襟足もジャキジャキ刈りあげられた。
 ――ああ・・・スゴイ・・・
 ロングヘアの女性を一分足らずで、一気にスポ刈りにしてのける店主のテクニックに、うっとりする。
 思わず店主に、
 ――抱かれてェ・・・。
とまで思う私がいる。
 鏡の向こうの私、イケメンすぎる。また、うっとり。
 店主がバリカンを持ち出す。
 ――いよいよだ。
 流石に緊張する。
 ブイイイイイイイン
とバリカンが唸りはじめる。
 胸が高鳴る
 私の中の「普通の女性」が
 今ならまだ引き返せるよ〜! 考え直せ〜!
と叫んでいるが、
 バ、バリカン、は、はっ、早くバリカン、バリカン入れてぇ〜!
と、のたうつオアズケ状態の「M女」の前では所詮蟷螂の斧、だ。
 バリカンが額にあてられ、ジジ、と髪と擦れ合う。忽ち、押し進められ、見事に一本のラインを刈り拓いた。バサバサと短い髪が落ちた。
 夢にまでみた記念すべき瞬間!
・・・なんだけど、何か現実感がわかない。
 あら、と戸惑っているうちに、バリカンはジャジャジャジャジャ、ジャジャジャジャ、とまず髪の右半面を剥ぎ取っていく。
 右側の髪が消えて、ようやく、
 ――刈られてるぅ〜!!
 ――丸坊主にされてるぅ〜!!
という実感を得た。
 存分に愉しんでやるつもりだ。とりあえずバリカンの感触は生温かい。
 店主は、次は後ろを刈っていく。
 ――いいよ、いいよ〜!
 テンションのあがる私。
 反面、
 ――なんかヤバくね?
 自分の顔が露わになるにつれ、その可愛くなさとガッツリ向き合わざるを得ず、軽くあせる。
「お姉さん、尼さんなら海音院ってお寺知ってる?」
と店主に訊かれ。
「いえ、知りません」
と答える。
「じゃあ、大空寺は知ってる?」
「いえ」
「なんだよ〜、尼さんのクセに知らないの?」
 私の返答は店主のご機嫌を損じてしまったらしい。
「すいません」
 一応あやまる。まさに「主客転倒」。
「海音院と大空寺の娘さんたちも尼さんなんだけどさ、あの娘らの頭剃ったの、俺なんだぜ」
 自慢げに言われ、
 ――ああ、だからね。
 女の頭を坊主に剃るのに、何ら躊躇う素振りさえ見せぬ店主に感じていた違和感は一応解消された。
 話している間にも、髪はどんどん刈られていく。
 バリカンは乙女の黒髪に齧りついて、ジャジャジャジャ〜、と髪はめくりあがり、フルーツの皮を剥くように私の頭は剥きあげられていく。剥きあがった頭に照明の熱と空調の風を感じる。
 ――ああ・・・いいよォ〜
 ショーツは愛液でグッショリ濡れている。そんな自分のド変態ぶりが恥ずかしく、でも興奮してしまうものは仕方ない。
 後ろの髪もバリバリ刈り払われた。15分足らず前に店の扉をくぐったロングヘアーの女はきれいにこの世から消滅していた。
 最後に刈り残された左側のスポ刈り部分。長い髪だった頃の遺物。
 その最後の砦にバリカンが入る
 ・・・と思いきや
 バリカンの音が止んだ。バリカンだけでなく照明も消えた。空調もストップした。
 停電らしい。
「停電かあ?」
 店主は落ち着いたものだ。
 ――おいおいマジっすか?!
 私は大いにあわてる。あわてふためく。半刈りのみっともない頭のまま、放置状態。進むも退くもできない。
 カランコロン。店の扉が開いた。
「いや〜、参っちゃったよ」
と老人が入ってくる。
「あ、会長さん」
と店主。「会長」ということは町内会の会長か?
「あっちもこっちも電気が使えなくて、皆大弱りさ」
「まったく弱るね。商売に差し支えるよ。原因は何だい?」
「わからん」
 そう言いながら、
「お客さんかい?」
と会長さんは丸刈り中の私に視線を転じる。落ちた髪の量に目を丸くして、
「女の人かい?」
と小声で店主に訊いていた。
「ああ、尼さんのお客」
「そうかい」
 うなずきつつも、会長さんはド肝を抜かれた様子。非常に恥ずかしい。下着姿を見られた方がまだマシかも知れない。
「アンタも大変だねえ」
と会長さんが声をかけてくる。
「ええ、まあ」
 鏡越しに苦笑しながらも、赤面。同情するなら、早く出ていって!と思う。
 そんな私の女心も知らず、店主と会長さんは停電について、ああじゃないこうじゃないと話し込んでしまった。
 ――なんでこうなるのォ〜!!

 停電は一時間経っても続いている。
 その間、店には何人かの訪問客が入れ替わり立ち代り現れた。停電の話をしに来る近所の人、とりあえずダメ元でカットに来てみた客、などだ。
 皆、私の姿を困惑と憐憫と好奇心の入り混じった目で眺めている。すっかり見世物状態・・・。しかもエアコンも止まったため、カットクロスを巻いたままだと暑い暑い、暑くて敵わない。とんだ初坊主となってしまった。
 反面、この一種の辱めに仄暗く興奮しているMな私もいて、いやはや我ながら難儀だ。
 店主も店主だ。
 カット中の客を放っておきっぱなしで、訪問者と駄弁っている。お茶くらい出せ。あるいは私を人目の届かないところへ隔離してくれ。それか話すなら店の外で話せ。だいたいプロなんだから、こういうときの対処法だってあるだろうに。
などと思ってたら、
 パッ
と照明がついた。
 ブィイイイイイイイン
とカット台のバリカンが持ち手のないまま、けたたましく振動し出した。
 ホッとした。下手したらアバンギャルドなヘアスタイルで店を辞去することになりかねなかった。
「おっと、復旧したか」
 じゃあ、と店主は知人との会話を打ち切って、仕事に戻ってきた。悪夢のような、淫夢のような一時間強だった。
 店主、再度、バリカンを握る。
 そして、私の残り髪を刈る。
 ブイイイン、ジャジャジャジャ〜
 左のコメカミの髪が後ろに持っていかれる。バサリ。
「一時はどうなるかと思いましたよ」
と苦笑したら、
「俺も長いこと床屋をやってるけど、こんなこと初めてだよ」
と店主も笑っていた。
 バリカンがブインブイン唸り、黒い部分が消えていく。コメカミの上、コメカミの下、耳元、とどんどん髪がなくなる。
 とうとう丸刈り頭になった。
 床に落ちてとぐろを巻いている長い髪を掃き集めている店主に、
「あの、切った髪、記念に持って帰りたいんですけど」
と言うと、
「いいよ、いいよ、持って帰んなくたって、こんなキッタねえ髪なんて」
と問答無用でゴミ箱に叩き込まれてしまった。
 ――ぐはっ!
 私の髪、確かに少々傷んでいたが、あんまりな言われようだ。
 長年一緒だった髪だが、きっと数日も経たないうちに、ゴミ収集車にぶち込まれて運ばれ、ゴミ処理場で他の可燃物とまとめて、メラメラと焼却されるのだろう。想像して昂ぶった。ド変態ここに極まれり、だ。
 店主はシェービングにとりかかる。
 頭が剃刀でゾリゾリやられ、ツルツルのピカピカ頭にされた。
 薄緑色の丸い頭になった自分と対面したが、鏡を直視できなかった。一言で言えばグロい。年齢性別も不詳になってしまい、自分の顔の、なんと言うか、俗っぽさ=生臭さと清浄な坊主頭はどうにもミスマッチで、むしろ長い髪で中和されていた私のそんな生臭さが露出して、「猥褻」という単語すら浮かんだ。
 店主は私の気持ちなど知る由もなく、
「やっぱり尼さんは坊主だよなあ」
と言いながら、私の坊主頭にたっぷりとローションをすり込み、
「お疲れさん」
 ペシッと頭をはたかれた。
「痛っ」
と顔をしかめる私だが、
 ――ま、そのうち慣れるかな。
 洋服と同じで最初は「服に着られている」こともあるだろうけれど、着ているうちに馴染んでくる。坊主頭もまた然り。
 そう思えたらば、
 ――ついにヤッちまったゼ〜。
と念願の剃髪を済ませたことへの満足感があふれ出てくる。
 ちなみに頭、やっぱりヒリヒリする。
 ――嘘つき〜!
 心の中で店主を詰る。何が「俺の腕なら心配ない」だ。
 とりあえず、もう長居は無用とばかりに、店を出て家路についた。

 坊主頭になって心がフワフワしていたせいだろう、帰り道、うっかり一時停止を忘れてしまった。
 そしたら、
「はい、止まって〜」
 警察の検問に引っかかってしまった。今日はトコトン、ツイてない。
 若いお巡りさんは違反者が尼さんだとわかると、ちょっと動揺したようだった。
「免許証、出して」
と言われ免許証を出す。無論、免許証の写真はロングヘアー。お巡りさんはまたちょっと動揺しつつも、証明写真と床屋のローション嗅をプンプンさせた私本人を見比べていた。
 お巡りさんが車のナンバーなどを控えている間、通行人がチラチラ私を見ていて、お巡りさんには、
「人々の模範となるべきお坊さんが、交通違反なんてしちゃあダメでしょう」
と叱られるし、反則金は取られるしで、本当に泣きたい気持ちだった。

 坊主頭になった私に、家族も周囲の人たちも大いに驚いた。
「一度やってみたかったから」
と驚かれる度に説明する羽目になった。
 実際、一度きりのつもりで頭を丸めたのだが、坊主になってみるとこれがひどく快適!
 なので、以後も坊主頭を保っている。
 MYバリカンも所持するようになった。そいつで頭をジョリジョリ刈る。セルフカットの技術も上達した。
 今日はデート。
 伸びた髪にバリカンをあてながら、メールを打つ。
『ただ今、髪をセット中♪ 尼僧の身だしなみナリ』
 送信。
 すぐに着信あり。
『遅刻すんなよ』
『らじゃー』
 送信、と。
 剃髪した私から男たちは遠ざかっていったが、逆に、
 坊主の方がいい!
という男性も意外に多く、その中で年も近くて波長も合う今の彼氏(お坊さん)と付き合いはじめた。次男なので婿入りもOKだという。
 ――もしかしたら――
 この頭って開運のヘアスタイルじゃないの?と思ったりもする。我が身のラッキーに、頬をつねる代わりに頭を撫でる。
 ザラリ
とした感触が気持ち良すぎる。
 アブノーマルな欲望を達成しつつ、リアルの幸福も成就する。ワンダホー!! 素晴らしき哉、私の人生。
 ――おっと、いけね。
 遅刻は御法度だ。
 バリカンのスイッチを切って、合わせ鏡で後頭部をチェックする。
 後頭部には黒いハートマーク。1mmと5mmのアタッチメントを使い分け、ハートの形に剃り残した。素人&セルフカットなので、ちょっと歪な形になってしまったが、ま、これぐらいは想定内だ。
 ダーリンは笑うかな。喜ぶかな。どっちだろう? どっちでも嬉しいけど。
 ――いざ、出発!
 腕白小僧のように、ジャバジャバと頭を洗った。




(了)



    あとがき

 これも「下宿人は見た」同様、何年も前(2009年の後半)に書いて、未完成のままだった原稿を完成させました。
 坊主願望のある尼さんは「役得」に続いて二人目です。実際はこっちの方が「役得」より前に着手したんですが。。。
 またも登場のカタクラ氏ですが、これまた「背番号13のカオスな週末」よりこっちの方が古いんですね。
 書いてて「長っ!」と焦りました(だから一旦お蔵入りした)。「アイディアは出し惜しまず」がモットーなんですが、今作の場合、ちょっと詰め込みすぎの感があります。ダラダラしちゃったかなあ、と(― ―;)
 停電ネタは実話を基にしました。いつも行ってる床屋――結構モダンで女性客もたまにいるらしいんですが、「この間、女のお客さんが来たんだけど、シャンプー中に停電になって、仕方なくカットせず髪も乾かないまま帰った」という話を理髪師さんから聞いて、カットの途中だったら大変だったろうなあ、と思ったのがきっかけです。
 色々、不満や心配もありますが、発表に漕ぎ着けられて嬉しいです。
 最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!




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