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一蓮托生後日談そのA
背番号13のカオスな週末


 とある土曜日の夕暮れ、
「すみませ〜ん!!」
と三丁目にあるカタクラ理髪店にパタパタ駆け込んだ少女がいた。
 少女は野球のユニフォーム姿だった。背番号は13。髪の毛は肩まで伸びていた。コワイ髪質のようで毛先はピンピンとはねていた。一見して、あまり手入れが行き届いていないことがわかる。
「頭刈って下さ〜い!!」
と少女は店内に消えた。
 20分後、
「ありがとうございましたあ〜!!」
とパタパタ店を飛び出していく青々とした丸刈り頭。
 その背中には背番号13のユニフォーム。
 まぎれもなく先ほど入店した長髪の少女だった。
「女が坊主になった・・・」
 店を見下ろすマンションのベランダで小学生の少年は目を丸くして、信じられない様子で、駈け去っていく丸刈り少女を見送っていた。

 少女の名は榎本秀美。中学2年生だった。
 彼女がどうして坊主頭になったか、その経緯をこれからおいおい語っていくとしよう。

 三週間前、
 秀美は自宅に遊びにきた親友のヒロちゃんとテレビを観ていた。
 テレビでは季節はずれの高校野球の話題――「白球を追う少女たち」と銘打たれた女子野球部員の特集が放映されていた。
 秀美も中学で野球部員なので、この日の特集に興味をもち、事前にチェックしていた。
 番組は秀美に激しい衝撃を与えた。
 画面に出現した二つの丸刈り頭。
 聖峰学園という学校の野球部に在籍する
 稲葉素子
 宍戸エリカ
というふたりの女子部員はそろって頭を丸めていた。
 強制じゃないんです、と二人は坊主頭の事情を説明していた。
「気合いです」
「他の男子もやってることだし、じゃあ自分も、と思って」
 あくまで自分の意思でやったという。二人ともカワイイのに――特に宍戸エリカは類を絶した美少女なのに、勿体無いと思う。
 話題はどうしても丸刈りネタに傾きがちで、部室で先輩(もちろん男子)にバリカンで散髪されているシーンや、髪を切る前の写真が紹介されたりしていた。
「すごいねえ」
と圧倒され気味の秀美だが、
「秀美もボーズにしちゃえば」
 ヒロちゃんの何の気なしの一言に仰天した。
「え〜?!」
「意外と似合うんじゃない?」
「無理だよ」
 秀美はこわばった笑顔で首を振った。
「アタシ、ボーズなんて絶対無理! 絶対イヤ!」
「いいじゃん、坊主。夏は涼しいし、手入れも楽だしさ」
「イヤッ! 絶対無理! 無理!」
 頑なに拒絶した。

 小学生のリトルリーグからずっと野球をやっていた。中学にあがっても、躊躇せず野球部の門を叩いた。そして野球部でただ一人の女子部員になった。
 野球部に入るにあたり、新入部員――その中にはリトルリーグ時代のチームメイトも少なからずいた――は部則に従って、残らず頭を丸めた。
 ただ一人の例外は秀美だった。
 彼女は髪を切らなかった。肩までの髪は、練習のときは後ろでまとめた。顧問や他の男子部員たちもそれを黙認した。

 2年生になって、同学年の男子部員たちが試合に出るようになった。
 が、秀美にはレギュラーの声はかからなかった。
 実力はそこそこある、と自負している秀美にとっては、それは耐えがたい不満だった。
 ――試合に出たい!
と足摺するように思った。
 代打でもいい。とにかく選手としてグラウンドに立ちたかった。
 ベンチで選手たちに声援を送りつつも、
 ――アタシならもっと巧くやるのに・・・
 そんな自惚ればかりが肥大していく。
 だが、ついにチャンスはきた。
 練習試合のスターティングメンバーを告げる顧問の口から、自分の名前が出たときには、
「え?」
とにわかには信じられなかった。ようやく事態がのみこめると、
 ――よっしゃあああーー!!
 小躍りした。念願が叶った。
 背番号ももらった。13番。
 試合は土曜日。
 ――アタシの実力を見せつけてやる!
 秀美は心の中、闘志を燃やした。

 ところが、蓋をあけてみれば散々な結果だった。
 全打席三振。
 エラーを3回もしてしまった。
 しかも秀美のエラーのせいで、チームは二点を失った。
 有頂天になっていた秀美は、この日、うっかりヘアゴムを忘れ、髪を結ばずに試合に臨んでいた。
 頬にかかる髪を手で払いのけていたら、
「榎本! 試合中に髪なんていじってんじゃねえよ!」
と自軍のベンチから怒号が飛んできた。悔しくて唇をグッと噛んだ。
 結局、秀美のエラーが響いて、チームは負けた。
 鼻っ柱を折られ、秀美は試合が終わってからも、ずっとうつむいていた。
 チームメイトは秀美を責めなかった。でも無言の裡にも非難の視線が自分に突き刺さっているのを感じた。ミジメな気持ちだった。
 ――もう野球なんてやめてしまいたい・・・。
とさえ思った。
 翌日の日曜も練習試合がある。
 監督の口から、またしても意外な言葉が出た。
「明日も今日のメンバーでいく」
 ――え?
 部員たちの間に小さなどよめきがおきた。無論、この日、チームの足を引っ張った秀美の再起用を訝っているのだ。
 誰よりも秀美が困惑している。
 何度も、
 ――もうスタメンから外して下さい。
と顧問に訴えようとした。これ以上恥はかきたくないし、他の部員に迷惑をかけたくなかった。
 退部
 そんなワードが脳裏に明滅している。
「今日は解散」
と監督が言って、部員たちは三々五々、帰路に着いた。
 秀美も悄然と歩き出す。
 その背中を、ポンと叩かれ振り向くと、部員の村上と松井だった。二人ともリトルリーグ時代からの仲だった。
「ドンマイドンマイ」
と村上。
「クヨクヨしたって始まんないよ」
と松井。
「今日がダメでも明日頑張ればいいじゃん」
「オレだって初めての試合のときは緊張して、ミス連発したもん」
「榎本、実力あるんだから明日は大丈夫だよ」
 二人とも一点の曇りのない笑顔で秀美を励ました。
「うん、ありがとう」
 目頭が熱くなる。
 ――参ったなあ。
と思った。
 ――これじゃ野球部やめられないよ・・・。
 涙腺がゆるむ。
 味方はちゃんといた。
 自分はどうだったろう、とふと考えた。
 こんなふうに仲間に優しい言葉をかけてあげたこと、あっただろうか。
 試合に出たいとそればかりで頭がいっぱいで、他人のことなんてどうでも良かった。傲慢だった。エゴイストだった。
 こぼれる涙を指で押さえながら、秀美はこれまでの自分を恥じた。
 ――明日こそは――
 いいプレイをしたい、と思う。チームの勝利に貢献したいと思う。
 自分の為だけでなく、村上や松井たち応援してくれる仲間の為に、自分を見捨てず試合に出してくれる顧問の為に、朝練で家を出る娘に毎日早起きしてお弁当を作ってくれる母親の為に。
 無性に自分に活を入れたくなった。
 この間、テレビで観た丸刈りの女子部員が脳裏をよぎった。
 ――アタシもボーズにしようかな・・・。
 フッと思った。

 しかし、帰りの電車の中、
 ――さすがにボーズはやりすぎかな。
と怯む秀美がいた。
 皆、ひくだろうし、色々支障もある。
 他にも気合いを入れる、あるいは示す方法はあるだろう。
 そんなことを考えていたら、
 スッ
と臀部に異変を感じた。
 ――え?!
 サワサワサワ
 何者かがお尻を撫で回している。
 ――まさか・・・まさか・・・
 痴漢だった。
 生まれて初めて遭遇する痴漢に、秀美は驚きと恐怖で声も出せず、ただ身を縮こまらせているだけ。
 そんな秀美の態度が痴漢を図に乗らせた。
 掌はお尻から前へ移動する。ユニフォームの上から秘所をまさぐられる。
 ――いやっ! いやっ!
 生臭い息が耳にかかる。痴漢の舌が髪を這う。クチャクチャと髪を舐められる。
 秀美は懸命に耐えた。
 駅に着くと一目散にホームに転がり下りた。
 髪には痴漢の唾液がたっぷりついている。
 痴漢にされるがままになっていた弱い自分が情けなかった。
 しかし、決心は固まっていた。
 ――やっぱりボーズになろう。
と。
 情けない自分とサヨナラするために。
 床屋へ向かって夢中でダッシュした。

「すいませ〜ん! 頭刈って下さ〜い!」

 床屋の主は熊みたいだった。
 熊みたいな店主と床屋独特の匂いに少し足がすくんだ。
 幸い他に客はいなかった。・・・というか、もうそろそろ閉店時間だったのだろう。
「どうぞ」
と招かれたカット台に座る。
「今日はどうするの?」
 眠たそうな声で聞かれ、
「あの――」
と一瞬口ごもったけれど、
「坊主にしてください」
 思い切って言った。
 女の子が坊主頭になんて、もしかしたら断られるかも、と心配していたが、意外にも、
「坊主?」
 クマさんは目を輝かした。
 ――そういえば・・・
 思い出した。
 この町には「丸刈りマニア」の床屋のオヤジがいて、野球部員たちが丸刈りにする際、体育会式に頭を押さえこまれバリバリ、バリカンと気合いを入れまくるという。
 ――たしかカタクラっていう床屋だったなあ。
 この店だ。
「お嬢ちゃん、野球部なの?」
 クマさんに訊かれ、
「はい」
 秀美は答えた。
「監督さんに切るように言われたの?」
とクマさんは少女客の身体にバサリとカットクロスを覆いかぶせ、さらに尋ねた。
「いえ、自分で・・・あの、明日試合なんで気合いを入れようかなあ・・・と思って・・・」
「そう」
 クマさんは「気合い」と聞いて、ホクホク顔でバリカンを取り出す。
 ――バリカン、でかっ!!
 部室にあるホームバリカンの比ではない。
 目を瞠る秀美に、
「で、丸刈りってどのくらいの長さ?」
とクマさん。
「えっと――」
 秀美は戸惑った。いざカットとなると多少腰がひけている。
「20mmくらいで」
「え〜」
 クマさんは秀美のオーダーが不満らしい、
「せっかく覚悟決めてきたんだから、もうちょいバッサリいこうぜ」
とハッパをかけてきた。
 店主の思わぬ対応に(女の子だから、なるべく長めに切る方向でいくとばかり思っていた)、
「あ、そ、そうですか?」
 秀美はあわてる。
「じゃ、じゃあ10mmで」
「気合いでしょ? もうちょっと短い方がいいとオジサンは思うなあ」
「どのくらいが良いんでしょうか?」
「う〜ん、最低でも3mm、できれば五厘くらいかねえ」
「え? え?」
 目を白黒させる秀美に、クマさんは、
「五厘でいこうか」
 有無を言わさずバリカンのスイッチを入れる。
 ヴィイイイイイイイイン
「ちょ、ちょっと、バリカンとめて下さいっ!」
「大丈夫。オジサンに任せなさい」
 問答無用でバリカンが前髪の生え際に差し込まれた。
 ジャジャジャジャジャジャ〜〜〜
と頭皮がバリカンの刃とすりあって、我に帰ったときには、青白いラインがクッキリと額からツムジまで走っていた。
刈られた髪が
 バサリ
とバリカンの刃を伝い、床に落ちた。
「あ〜」
 顔をしかめる秀美。
 しかし、もはや後にはひけない。
 一刈り目をバッサリいかれて、腹も据わった。髪への未練はあっさり霧消した。
 ――仕方ない、か。
 頭髪の処分については一切、クマさんに委ねることにした。
 刈りあとの右隣の髪、さらに右隣、と髪が刈られる。
 ジャアアアア、ジャアアアアア、
 続いて左へ、左へ。
 ジャアアアアアア、ジャアアアアァァ、
 バサリ、バサリ と汗と埃と土と変質者の唾液にまみれた髪がカットクロスや床に落下する。
 忽ち落ち武者みたいな頭にされた。
「うんうん」
 クマさんは嬉しそうに一人でうなずいている。
 秀美はかたい表情で、変貌を遂げていく鏡の自分を見つめている。
 クマさんのバリカンは的確かつ情熱的に、秀美の髪を剥ぎ取っていく。相手が女の子なのに容赦がない。普通はもっと躊躇ってもいいはずなんだけど。
 そんな秀美の違和感に気づいたわけではないだろうが、
「プロだからねえ」
とクマさんは言った。
「実は女の人を坊主にしたこともあるのさ。二人ほど、ね」
「そうなんですか」
 秀美は驚いた。坊主頭になる女性が自分の他にもいるとは信じられなかった。
「二人とも尼さんでさ」
「ああ」
 なるほど、と腑におちた。
 バリカンはサイドの髪に入れられる。
 流石プロ、最小限のバリカンの動きで、
 ドサアアアアアッ
と大量の髪がこそげ落とされ、床に散る。
 ――どひゃああ!!
 ド胆を抜かれる秀美だが、
「大漁大漁」
 クマさんは上機嫌。せっせとバリカンを入れていく。
「やっぱり野球部は坊主だよなあ」
なんてひとりごちている。
「お嬢ちゃん、沖縄顔だねえ」
と言われ、
 ――沖縄顔?
 鏡の中の自分の顔をまじまじと見る。まあ、色は浅黒いし、眉毛も太い。少々厳つくもあるような気もする。南方系の顔立ちだ。沖縄っぽいと言えば言えるかも知れない。
「きっと坊主も似合うよ」
「そうッスか?」
という会話が交わされている頃には、髪は後頭部と左サイドを残すのみとなっていた。
 片剃り頭の見苦しさに秀美は耐えられず、目を閉じた。
 ヴィイイイイイン
というモーター音と、
 ジャアアアアアアアア
という髪の啼き声と、
 ドシャアアアアア
という髪がケープを叩き滑り落ちる音と、剥き出しになった頭皮が感じる店の空調、そして頭の軽さを頼りに散髪の進行具合を想像した。
 ヴィイイイイイイン
    ジャアアアアアアア
      ドシャアアアアアアア
 ヴィイイイイイイン
    ジャアアアアアアア
      ドシャアアアアアアア
「いいね、いいね〜」
 クマさんのハシャぐ声がする。その無神経さがなんとも腹立たしい。
 頭は完全に軽く涼しくなり、髪の落ちる音も消えたが、バリカンのバイブレーションは満遍なく頭をかけまわる。きっと仕上げなのだろう。なめまわすように刈られに刈られた。
「こんな感じだけど、どう?」
とクマさんに断髪終了を告げられ、秀美はおそるおそる目を開けた。
 五厘刈りの自分が、どーん、と目に飛び込んでくる。
「ちょっwwwwwwwww」
 思わず噴き出す。
「クリクリじゃんwwwwwwナニこれwwwwwwww男にしか見えねぇwwwwwキモいよwwwwまじキモいってwwwww 頭青っっwwww青っっwwwナnwwwwwwwwwwwwwwナニ、この小坊主wwwwwwナニ、この完全に女捨ててる頭wwwwwwwww まじ笑えるんですけどwwwwwwwwwwwwwwマジ死ぬwww笑い死ぬぅwwwwwwwwしかももう100%後戻りできね〜wwwwwww男だよ、男wwwwwwwwwていうか男子の部員より短っwwww うひゃあwwwwwwwww髪メッチャ落っこってるぅwwwスゲーwwwwwwwwww頭シャリシャリするぅwwwwwwwwwメッチャ気持ちいいんですけどwwwwwwでmwwwwwwwwwwでももう彼氏とか諦めるしかねーwwwwwwwwww 無理wwwwww無理だねwwwwwwwwwこれはもう彼氏作るとか無理なレベルwwwwww男子逃げるってwwwwwwwwww」
 こうなっては笑うしかない。
「お嬢ちゃん、坊主ってかなり便利なんだぜ。ちょっと待ってな」
とクマさんは店の奥に引っ込むと、すぐに戻ってきた。片手には鶏卵を握っている。
 そして手にした卵を秀美の坊主頭に、
 ベチャッ
と叩きつけた。卵が割れ、中身が秀美の頭にドロリと流れ出した。
「何するんですか!」
と目を剥く秀美に、
「大丈夫。賞味期限切れのやつだから」
「余計腹立たしいッス!」
「見てな」
 クマさんは涼しい顔で秀美の首根っこをつかみ、シャンプー台に押しやると、ジャバジャバと洗った。卵はきれいに洗い流された。
「で、こうタオルで拭くと・・・な? あっという間に元通り。スポーツするにはもってこいってわけ」
 まるでテレビの通販番組みたいに坊主のメリットを説くクマさんに、
「確かにそうッスねえ」
 一応納得する秀美。
「長い髪だとこうはいかないよ」
とクマオヤジは調子にのってさらに、掃き集めた秀美の髪の上で卵を割ってみせた。そして手でグチャグチャと髪と卵の中身を混ぜ、
「こうなっちゃうと洗うのも大変だし、洗った後ドライヤーなんかで乾かすのに時間がかかる」
 不便だろ?と言われ、
「はあ、まあ・・・」
 やや憮然とうなずく秀美。坊主にしたとはいえ、ずっと伸ばしてきた髪を弄ばれるのは、あまり愉快ではない。
 そのままシャンプーをして、首筋や顔を剃ってもらう。
「明日試合なんだろ」
 頑張れよ、とクマさんに、
 ピシャリ
と頭をはたかれ、さらに、
「気合い注入〜」
と両方の握り拳で坊主頭をはさまれ、グリグリやられた。
「痛っwwwwwwwオジサン、痛いってwwwwwwwwww」
 秀美は笑いながら悲鳴をあげた。なんだか一皮むけた気分だった。
「ありがとうございました〜!!」
とお礼を言って店を出た。
 初めてのレギュラー、初めての痴漢、初めての床屋、初めての坊主、と初めてづくしの土曜日は暮れた。

 翌日、
 五厘刈りになって現れた秀美にチームメイトたちは、
「お前、榎本か?!」
 皆、のけぞって驚いた。
 そして、
「スゲーな」
「俺たちより短ぇじゃん」
「よくやった」
「似合うぞ」
と口々に賞賛した。ついでに頭をなでられまくった。
 顧問も、
「そこまでしなくても」
と苦笑しながら秀美の頭をなでてくれた。
 対選校の選手たちが自分を見て、
「あれ、女だよな?」
「男だろ」
「いや、女だって」
「女も坊主かよ。スゲーなあ」
とヒソヒソ言い合っているのが、くすぐったかった。

 試合は一進一退の攻防。
 秀美に打順がまわってきた。
 2アウトでランナーは1,3塁。チャンスだ。
 が、秀美に気負いはない。
 ――練習でやったようにプレイすればいいだけ。
 平常心だ。
「榎本、かっ飛ばせ〜」
「リラックス、リラックス」
 村上と松井の声援が聞こえる。
 ピッチャーが投げた。ど真ん中!!
 ――来たああ!!
と思ったときには、身体が反応していた。
 快音が日曜のグラウンドに響き渡った。




(了)



    あとがき

最新作です。
今年に入ってずっと尼さんモノばかりだったので、久しぶりに野球少女を書きたくなりました。
これはイラストから書きました。ユニフォームの女の子が床屋に駆け込んで、坊主頭になって飛び出してくる、ってだけのイラストなんですけど、そこから色々想像をふくらませてお話にしました。
今回は、「自分の坊主頭に爆笑する女の子」です。
以前、尼さんの特集をニュースでやってて、「初めて坊主頭の自分を見たときは?」という質問に「笑いました」と答えていて、確かにそういう女性もいるだろうなあ、と。でも断髪小説的にはNGのような(汗)
床屋の片倉さんは「女弁慶」シリーズや「鈴宮ハルカ」で登場していて、「また出したいなあ」とずっと思ってたんですね。この人が出ると、なんだか常識というか時空が歪む(笑)。いい意味で、「何でもアリ」な感じになります。
お付き合い下さり、ありがとうございました♪♪




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