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法師武者の正体は


 稗田からの使者が岡咲城に参着したのは、山麓を賑わせていた山桜が、そろそろ散り始めた頃だった。
「稗田の使者が?」
岡咲城主、嘉田備後守の未亡人、お蔦の方は眉間に皺をよせた。
「亡き御屋形様の弔問の使者とのことにござりまする」
 重臣(おとな)衆のひとり、牧田兵庫が言った。
「今頃になって弔問とは」
 皮肉な笑みを浮かべるお蔦の方に、
「如何取り計らいましょうや?」
と兵庫は尋ねた。この荒武者も幾多の戦場を駆け巡るうち、いつしか頭に白いものが混じりはじめている。
「追い返しますか?」
「まさか」
とお蔦の方は苦笑した。
「稗田とは盟約を結んだ間柄ですよ。その弔問の使者を追い払うわけにもいきますまい」
 今はひたすら耐え忍ぶべきなのですよ、とお蔦の方は世事に疎い武辺者の兵庫を諭すように言った。
 兵庫は黙った。奥方の苦衷を察したのだ。稗田の使者に会うのが、辛いのは誰よりもお蔦の方であろう。
 兵庫は七年前のお蔦の方の輿入れを思い出していた。
 嘉田家とお蔦の方の実家である柚木家の間にたって、縁談をまとめたのは、兵庫であった。
 主君の妻となるうら若き姫御寮人の美しさと聡明さに、兵庫は言い知れぬ思慕をおぼえた。
 恋に似た忠誠心とでも言うべきその感情に、突き動かされ、兵庫はこれまで、お蔦の方に対して犬馬の労を惜しまなかったのだ。 「御屋形様が御存命であれば」
端武者上がりの稗田の如きに、と兵庫はお蔦の方のために、つい嘆いた。
「兵庫」
お蔦はそんな老人をたしなめた。
「それは申しても詮無きことですよ」
岡咲城主嘉田備後守は若くして家督を継ぎ、当時、小豪族が割拠し、互いに抗争、同盟を繰り返すこの地方の乱世にあって、よく家臣団を統御し、武威を近隣に知らしめた。
 しかし二年前の合戦で信頼していた妹婿、浮田掃部の裏切りにあい、落命した。まだ三十にも満たぬ若さであった。
 備後守の遺児、不動丸は未だ六歳。家督を継ぎ、家を背負うにはあまりに幼すぎた。

 動揺する家臣たちを取り静めたのは、未亡人のお蔦の方であった。
 今川義元の母、寿柱尼の例もあるように、戦国の乱世において、女性が当主同然に主導権を発揮することは、さほど珍しくもなかった。お蔦の方はその重責を十分に果たせるだけの器量があった。才知も勇気もあった。家臣を気遣う情深さもあった。
 楚々とした姫君時代からお蔦の方を見守ってきた兵庫をはじめ、重臣たちは、
 ――このようなお方であったか。
と改めてお蔦の方を見直す思いであった。
 仮の当主であるお蔦の方の手腕は見事だった。
 まずは外交で勝ちに乗じて嘉田家の本拠に攻め入ろうとする敵を抑えた。さらに、家臣が備後守の後を追って殉死するのを禁じ、有益な人材の損失を防いだ。
 家臣の所領を安堵し、検地を行い、税制を変え百姓の負担を軽くするなど、内政においても目を瞠るものがあった。
 ――全ては不動丸君の御為を思ってのことなのであろう。
 兵庫は自らが腹を痛めた不動丸が家督を継承し、立派な武将になるまでの間、家を守ろうと懸命に努めるお蔦の方の母心を思って、密かに涙を拭った。お蔦の方への忠義の念はますます強まった。
 不動丸の元服までは平穏無事であれかし。祈るような思いでいた。
 しかし乱世は非情である。
 お蔦の方の八面六臂の女傑ぶりに、近隣の土豪は表向きは鳴りをひそめていたが、内心では虎視眈々と領主不在の嘉田領を狙い、その機をうかがっていた。
 なかんずく稗田家は油断がならなかった。
 稗田の当主、上総介は凡庸な人物であったが、彼の父、弾正は隠居して頭を丸め、「一徳斉」と号して後も依然実権を握っていた。当節流行の下克上で主君を弑し、一介の武弁から城主に成り上がったこの欲得の塊のような老人は周りから、「入道殿」と呼ばれて、ひどく嫌われ、恐れられている。
 「入道殿」は街道の要所にある嘉田領を舌なめずりして、我が物にせんと欲している。
 今現在は自領の目と鼻の先の秋月家との合戦にかかりきりで、そのため、嘉田家とは一応同盟関係にあるが、秋月を滅ぼしたら、餓虎の本性をあらわし、嘉田家に矛先を向けるのは必定だ。
 風聞によれば、浮田掃部に裏切りをそそのかしたのは、この入道殿であるという。お蔦の方にとっては言わば、夫の仇である。
 その入道殿の許から使者が差し向けられたとあっては、お蔦も心中穏やかではない。
「あの欲深坊主の魂胆は知れておりますぞ」
「我らの様子を探りにきたのでしょう」
 お蔦の方もわかっている。
 備後守亡き後の城内や家臣団の様子、領内のありさまを、つぶさに見聞し、入道殿の耳に入れる。
 とりわけ近隣に名を馳せる事実上の領主であるお蔦の方の器量を見定めることで、今後の方針をきめるつもりなのであろう。
「おかたさま、侮られてはなりませぬぞ」
と兵庫は険しい表情で身を乗り出した。
「おかたさまの態度如何で、もし、与しやすし、と入道殿が見切れば、たちまち稗田の軍勢が我が領内に押し寄せますぞ」
「そうでありましょうか」
 お蔦の方の顔からはすでに悲痛の色は消えていた。いつもの思慮深い女領主の顔になり、
「兵庫」
「はっ」
「これは将来の禍根を断つまたとない好機ではありますまいか」
「と申されますと?」
「入道殿の浅知恵を逆手にとるのです」
「どのように?」
と尋ねる武辺一辺倒の兵庫にお蔦の方はそれ以上は答えず、
「お槙」
と乳母を呼んだ。
「はい」
「浄萬院の泰源禅師に城までご足労願うように。お急ぎ下され、とな」
 浄萬院は嘉田家の菩提寺で、泰源和尚はそこの住持である。
「かしこまりました」
 お槙はただちに侍女にお蔦の方がその場でさらさらとしたためた文を渡し、寺へと走らせた。
「兵庫」
「はっ」
「稗田の使者には菓子でも与えて、暫し待たせておくように」
「はあ」
 不得要領顔で承知する老臣に、
「それと」
 お蔦の方は言い添えた。
「不動丸を呼んでください」

 不動丸が来た。
 勇猛な父と聡明な母の血を受け継いで、行く末は頼もしい武将になりそうな少年だった。
 その少年に
「不動丸」
とお蔦の方は驚くべきことを言い渡した。
「今日からそなたが嘉田家の当主ですよ。そのつもりでゆめゆめ精進を怠りませぬように」
 これには兵庫もお槙も大いに戸惑い、
「おかたさま、若君はまだご幼少の御身にございます」
「御家督のことはまだ早いかと存じまする」
 しかし、お蔦の方の次の宣言はさらに驚愕すべきものだった。
「ワラワは今日をもって髪をおろします」
「なんと!」
 兵庫はのけぞらんばかりに仰天した。
「尼になられるのでござりまするか?!」
「そうです」
 お蔦の方は一片の曇りもない表情で首肯した。
「何ゆえに?」
とお槙も狼狽している。
「そなたたちこそ不思議なことを訊くものですね」
 お蔦は、ホホ、と笑った。
「武士の妻が夫の亡き後、得度剃髪するのは当然のことではありませぬか」
 確かにお蔦の方の言うことは道理である。武士の未亡人が尼になるのは、鎌倉の昔、尼将軍と称せられた北条政子をひきあいに出すまでもなく、古来よりの武士社会の慣わしである。
「むしろこれまで俗体であったこと、亡き備後守様に対して申し訳なく思います」
「しかし・・・」
と兵庫は唇を噛んだ。
 お蔦の方が今まで髪をおろさずにいたのは、領主代行として息つく間もないほど多忙な日々を送っていたからだ。
 それに、お蔦の方が出家して俗世を捨ててしまえば、
「嘉田の御家は立ち行きませぬ」
と兵庫はお蔦の方の突然の決意を必死で押しとどめようと、言い募った。
「兵庫、心配は無用ですよ」
とお蔦の方は言った。
「髪をおろしても政(まつりごと)は行います」
「なれば、何ゆえ、今このようなときに」
「思案があるのです」
とだけしかお蔦は答えなかった。

 泰源和尚が参着した。
 若い頃、京の五山で禅や学問を学んだ名僧である。いかにも禅僧らしく、苛烈な人柄で、
「文には得度の支度を願うとあったが、一体どなたが得度なされるのかな?」
とお蔦の方に対しても、ぞんざいな口調で尋ねた。
「私です」
と答えるお蔦の方に、流石の泰源和尚も
「ホウ」
 一瞬毒気を抜かれた顔をした。
「それはまた急な話ですな」
「亡き夫などは、早う出家してワシの菩提を弔わぬか、この暢気者めが、と泉下で焦れておりましょう」
「さてさて」
 泰源は坊主頭をポリポリかいた。
「奥方はお幾つであったかな?」
「二十六でございます」
「まだお若い。尼にならずとも、良き縁もござろう。あたらその美しい黒髪を剃りこぼつはワシの本意ではない」
「そこを伏してお願いいたします。どうか禅師の手で尼にしていただきとうございます」
「後で還俗などという見苦しきことにでもなれば、戒師の拙僧の名にも傷がつきますからな」
「還俗はいたしませぬ。生涯、夫の菩提を弔います」
「はてさて」
 泰源はお蔦の方の覚悟を試している。それを察したお蔦の方は、言葉ではなく行動で自らの覚悟を示した。
 スラリと懐剣を抜き放ち、丈長き黒髪を根元から、
 ブツリ
と切り落とした。兵庫もお槙も侍女たちも一様に目をそむける中、当のお蔦の方だけは笑顔だった。
「どうやらご決意は本物のようでござるな」
 泰源も容儀を改めざるを得ず、
「では持仏堂にて、得度を授け参らせる」
 侍女の一人に剃髪のため、湯をわかすように言いつけ、立ち上がった。
「ありがたく存じます」
とお蔦の方も後に従った。

得度は城内の持仏堂で手早く行われた。
泰源は剃髪の偈を唱えながら、頭を垂れるお蔦の方の髪に剃刀をあてた。
お蔦の方、無言。目を閉じ、手を合わせ、凛とした表情で剃刀を受けた。
 スーッと剃刀が動く。
 太源和尚は見事な手際で、お蔦の方の黒髪を剃り落としていった。
 ゾリゾリと黒髪が摘まれ、あとには青く清らな頭皮が現れる。剃り落とされた髪を侍女のひとりが、甲斐甲斐しく拾い上げ、懐紙を敷いた三宝に載せていく。
 お蔦の方は両の掌を合わせ、目を閉じている。目を閉じたまま、頭上で執り行われている尼になるためになさねばならぬ行為に、満足げに微笑している。やがて目をうっすら開け、
「お槙」
と傍らで泣いている乳母に声をかけた。
「何故泣くのです?」
「あまりにおいたわしくて・・・」
 お槙は伏せていた目をあげ、その目に飛び込んできた頭頂部を無残に剃り上げられた主の姿に、今度は声をあげて泣いた。
「仏門に入るに悲しみの涙は障りとなりますよ」
「はい」
 兵庫ももう少しで泣くところであった。しかしかろうじて、堪えていた。
 ずっと慕っていた奥方様が尼になるのは、兵庫にとって死ぬより辛いことだった。

 青々とした清清しい剃髪になった奥方様に、老僧は「陽庚尼」という法名を与えた。
「稗田の使者が参られているとか」
「広間に待たせてあります」
「さても恐ろしき女性よ」
 禅師は奥方様の深謀遠慮に気付いたらしい。
「稗田の入道を謀り事にかけるおつもりか?」
 陽庚尼となったお蔦の方は幽かに微笑した。

 使者は野田但馬という狐に似た武士であった。
 但馬は才長け、入道殿に重宝されていた。女丈夫の誉れ高いお蔦の方の人物器量を篤と見極めよ、との入道殿の密命をおび、こうして一刻あまりも引見を待っていたが、あまりに待たされるので、どれ、厭味のひとつでも言ってやろうかの、と身構えていたところに、
「御屋形様のおなりにございます」
と近侍の者が告げたので、一応は平伏した。
「面をあげられよ」
「はっ」
但馬は僧形になって現れたお蔦の方に目を剥いて、しばらく言葉を失っていたが、
「ご出家なされたとは知りませなんだ」
「先頃髪をおろしました」
「ほほう」
と神妙に首肯する但馬であったが、まさか目の前の奥方様がつい半刻前まで有髪だったとは、思いも及ばない。
「私も夫亡き後、女子の身ながら国政にたずさわって参りましたが、いささか疲れました」
とお蔦の方は丸い頭を擦りながら、
「もはや、浮世にあっても甲斐なき身ゆえ、こうして落飾いたしました」
「それはそれは」
 但馬は言葉もない。
「尼になったからには、近く城を出て、山奥に草庵を結び、亡き殿の菩提を弔いながら、静かに余生を送りたく思っております」
「世を捨てられると仰せにござりますか?」
「はい」
「お跡目はいかがなさるので?」
「無論、不動丸に継がせます」
 丹波は唸った。唸りつつも内心では、喜悦していた。
「あと家臣たちが不動丸を守り立てて、よきように御家の舵取りをしてくれるでしょう」
 ついては、とお蔦の方は、
「稗田殿にはどうか今後とも当家に合力くださりますまいか」
辞を低くして、使者に頼んだ。
「それは、嘉田殿とは長年の交誼もござれば、当家としてもやぶさかではありませぬが」
但馬も古狐、勿体をつけた。
「俗世に未練はありませぬが、気にかかるは、不動丸の行く末。どうか、不動丸の身が立ち行くよう、稗田殿には御後見を賜りたく存じます」
 ますます辞を低くするお蔦の方。ついには、
「もし家臣たちが不動丸をないがしろにし、国を乱すようなことがあれば、そのときには、上総介様、ご隠居様の御下知を仰ぎたく――」
とまで言った。
 ――なんたることを仰せじゃ。
 兵庫は目の前が真っ暗になった。お蔦の言葉は一種の売国とさえ言える。
「そのようなこと、あらねば良いのでございますが」
 但馬は隣国の奥方の母心に感じ入ったふうを装ったが、
 ――これは存外な・・・。
と帰路、喜色満面で馬に揺られていた。。
 そして直ちに入道殿の許に参上すると、
「奥方様、ご出家なされておりました。俗世を厭うて隠居するおつもりらしく、いやはや、烈女よ、女丈夫よ、との風評はまったくの出任せで、あれはただ我が子可愛さに盲となっている愚母でございますな」
と城でのこと、お蔦の方の言葉を、ありのまま報告した。
 悪辣で聞こえた入道殿も所詮は土臭い田舎土豪にすぎない。
「小童が当主ならば、岡咲の城を落とすなど、路傍の草を引っこ抜くより容易きことぞ」
と小躍りして喜び、
「嘉田領などいつでも獲れる。今は秋月との決戦に力を尽くすべし」
 その場で稗田家の外交方針を決したのであった。

 さて、柔和な笑みで但馬を見送ったお蔦の方は一転、屹と厳しい顔になり、
「兵庫、直ちに兵を集めるように」
と命じていた。
「兵を?」
 兵庫はいぶかんだ
「いずかたをお攻めなさるので」
「稗田です」
 ゲエ!と兵庫は目を剥いた。
「お、おかたさま・・・」
はじめて奥方の知略が理解できた。
「入道殿は今頃油断して、秋月との合戦支度に忙しいでしょう」
 その隙をついて出兵する、という。
「後の災いの種を除くのでございますな」
「采配は私自らがとります」
早ういたせ、と追い立てられ、
「はっ」
 駆け出しながら、
 ――古今、出家を戦略の種につかった武将があったろうか。
兵庫はただただ舌を巻くばかりだった。

 坊主頭に頭巾をかぶり、緋織の甲冑で身を固め、その上に法衣を纏ったお蔦の方は、女の身で、しかもこれが初めての合戦とは思えぬほどの武者振りで、馬上、
「者ども、かかれや、かかれ」
と采配をふり、女の法師武者に率いられた嘉田勢はどっと稗田領内に押し入った。
 仰天したのは、入道殿はじめ稗田の侍たち。
「さても、女狐め、たばかりおったな!」
と歯噛みして悔しがったが、思いもかけぬ同盟者の侵攻になすすべもなく、城に篭った。
 お蔦の方は容赦せず、孤城を攻めに攻め立てた。
 嘉田勢の中に兵五郎という若い侍がいた。
 この兵五郎が城方でもとりわけ頑強に抵抗する二の丸勢にひるみ、おぼえず退きかけた。
 お蔦の方はそれを見逃さず、
「臆したか兵五郎! そなたはそれでも武士ですか! 父祖以来の武名を辱めるとは汚し! 返せや、返せ!」
天地にこだまするほどの大声で叱咤され、兵五郎、たちまち奮起して、また城に向かって駆けた。
「まるで巴御前のようですな」
という兵庫の軽口に、お蔦の方は笑わず、
「兵庫、無理はいけませぬよ」
 若い者に遅れをとるまいと獅子奮迅の働きをする老武者を気遣った。
 ――だから・・・
 兵庫は思った。自分はこの御方が好きなのだ。
まさかあの婚礼の日には、同じ戦場に立つ日がこようとは考えもしなかったが。
「なんの」
 莞爾と笑った。
「まだまだ若造どもに遅れをとる兵庫ではありませぬぞ。ただ――」
「ただ?」
「もし某が不覚をとって死したるときは、是非とも尼御前様の読経で送っていただきたいものですな」
「殺生の限りを尽くす尼の経では、冥土で迷いますよ」
 お蔦の方もおどけた口調で言った。


 城は二日で落ちた。
 上総介は自刃して果て、入道殿はいずこかへ落ち延びていった。
 兵庫も死んだ。
 落城の折り、徹底抗戦する武者の刃にかかったのだった。
 変わり果てた兵庫の亡骸と対面したお蔦の方は
「兵庫、そなたの忠誠は生涯忘れませぬ」
と袖で涙を拭った。そして、兵庫の願い通り、彼や戦没した兵たちのため、静かに経文を誦した。

 陽庚尼となったお蔦の方はその後も領主の不動丸の後見人として、善く国を治めた。

 嘉田家がなくなった後も、「嘉田の尼御前様」の遺徳は土地の人々の間で語り継がれ、今でもこの地方ではお蔦を讃える里謡が伝わっているという。
 以下がその里謡である。

 やれ トントン やれ トントン
 嘉田を治むる尼御前さまは
 頭丸めてお城を獲った
 鎧兜に身を固め 馬上美々しき法師武者
 あれは誰かと尋ねたら
 あれは○○(地名)の尼御前さまよ
 頭丸めて薙刀取った
 やれ トントン やれ トントン






(了)



    あとがき

お久しぶりの迫水です。
懲役七○○年時代劇第四弾は戦国時代です!
 内容は実は迫水が十代の頃から温めていたものです。元々のアイディアでは結構、したたかなヒロインでした。食えない感じの。

 これ、すでに三月ごろにはかなり書いてたんです。
 この稿だけじゃなくて、今年の春は何本か書けてて、うめろうさんに「二周年記念はアップラッシュになるよ〜」って言ってたんです。
で、六月に「エリカお嬢様」と「女弁慶」の外伝をまずアップして、次はコレ、って思ってたら、ネットが繋がらなくなった・・・(−−;
復旧したかと思ったら、今度はパソコン自体が・・・コーヒーこぼして・・・(― ―; ちょっと濡れただけなのに〜(TT)
なかなか修理に出せず、夏を越して、ようやく修理に出して、ハードディスク交換してもらって、返ってきたんですけど(絶妙のタイミングで!)ネットに接続できない・・・という有様で、ネットができるようになったのは十月に入ってからでした。

掲示板で舞助さんともお話したんですけど、ずっと迫水のなかにあった疑問。
何故、時代劇(剃刀モノ)のヒロインは不幸になるんだろう?
「逢魔が時」の由姫、「甚内行状記」のスマ、「お鹿の一件」のお鹿・・・。
 皆、報われてない・・・。
 たまにはハッピーエンドがあってもいいんじゃないか。
 そんな趣旨のもと、昔のアイディアを引っ張り出して書き始めたのが本作です。
 舞助さんとお話ししてたときは、まだボツにする可能性があったので、「今、時代劇の新作を書いているので」とは言い出せなかったんです。ホントにごめんなさい(><)

 結果はと言うと、やっぱ剃刀って難しいなあ・・・。






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