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変成男子・第十二話「二つの断髪式」


前回までのあらすじ

 私、中目黒有理、十七歳!(←おいおい)私立海部野下深(うみべのかふか)学園二年生。
 密かに想いを寄せている野球部のエース・上条龍法先輩に告白したくて、あるオカルトショップで両想いになれる魔法のロザリオを買ったの。無宗教のくせに。
 そうしたら色々あって(バックナンバー買って読んでね)、幼馴染の堀江京介の心とアタシの心が入れ替わっちゃったの。
嘘?! アタシが京介で京介がアタシ? あ、そうそう、「幼馴染」って言っても別に、毎朝、部屋の窓から入ってきて「早く起きないと遅刻しちゃうぞ〜(ゆさゆさ)」とか全然やってないから。
 上条先輩とは野球部の先輩後輩の京介は、アタシと先輩の仲を取持ってくれると約束したけど、話がうますぎて、ちょっと心配。だって、あんまりトントン拍子に恋が実っちゃったら、ストーリー的に(以下略)
 そんなとき、なんとアタシ(京介)にクラスメイトのお財布の窃盗疑惑が持ち上がちゃって、もう大変!
窮地に立たされたアタシ(京介)を助けてくれたのは、憧れの上条先輩! 上条先輩が名推理によってアタシ(京介)の無実を証明してくれたおかげで、アタシと京介はピンチを脱したのだった。ありがとう、上条先輩! ホントは盗んだんだけど。
 こうして上条先輩に顔と名前をおぼえてもらったアタシは、更なるステップアップを目論む。
 だけど新しいクラブの顧問は就任早々、「お前らたるんでる!」と一喝。「気合い」と「団結」のため、部員全員に突如下された「断髪令」! 映画研究部なのに?!
 アタシたち部員に与えられた猶予はわずか三日間。用事があったりして無理な場合は四日間。
アタシは悩んだ末、部活を選択した。映画が好きだから・・・(「別に個人で観りゃいいじゃん」と気付いたのはずっと後のこと)。
 覚悟を決めたアタシは、アタシの身体の持ち主である京介に断髪を許可するのだった。
大好評ドキドキ学園ラブコメディ、第十二話、お楽しみください!



登場人物たち

中目黒有里(京介)



つい人の欠点をさがしてしまう高校二年生



堀江京介(有里)





「楽しもうぜ」が口癖(本編ではあまり言わない)



上条莉穂子



隠れオタだがバレてる




上条龍法



勉強ができない(写真はイメージ)



それでは物語をお楽しみ下さい



※※※※※※※※※※※※※


 ――ゲエー!!
 京介から届いたメールに有理は飛び上がらんばかりに仰天した。
と言うか、実際、飛び上がった。
飛び上がって、ソファーから転がり落ち、自宅を出、駆けた。必死で駆けた。江戸時代だったら、いい飛脚になれそうな速度で突っ走った。
 ちなみに京介からのメールは、

 いま商店街の安東理髪店。もうすぐバッサリいっちゃうよ〜(^^)v 良かったら見に来い(笑)

\\\\\ というもの。

 ――「理髪店」ってことは・・・床屋?!

 確かに断髪は許可したが、乙女の黒髪を切るのに、床屋はないだろう。
 憤慨しつつ走る。メロスのように走る。
 そういえば京介は以前、まだ二人の心が入れ替わる前、「美容院は苦手」と話していた。いつも床屋でカットしてもらっていたらしい。
 男だった頃の習慣で、入りやすい床屋にしたのだろうけれど、

 ――アイツ!

 もうちょっと女心ってものを考えて欲しい。

 見えた。赤青白のトリコロール。くるくる。

 有理は生まれて初めての床屋の扉を勢い良く開けた。カランコロン。

「あ、有理・・・じゃなくって2年B組一のイケメン、堀江京介君じゃないか」
と暢気な声が出迎えた。

 ――遅かったか・・・。

 床屋の入り口でサヨナラホームラン打たれた投手みたいにガックリと崩れ落ちる有理。
 メロス、間に合わず。友はすでに処刑台・・・いや、理髪台に。
 二ヶ月前まで自分のものだった端正な顔が、理髪台から嬉しそうに有理を見下ろしている。テルテル坊主みたいにケープを巻かれている。まだ長い髪だが、それも風前の灯。
 松平健を三十発ぐらい殴った感じの風貌のオヤジに、
「バッサリ切っちゃってください」
と有理本人が十七年間の人生で、一度も口にしたことのない、したくもないリクエストをしてくれやがっている。
「いいの?」
とマナー上、乙女の髪を惜しむ松平健を(略)オヤジに
「いいッスよ♪」
 肩甲骨までのロングヘアーの美少女はアッケラカンと答えてのける。
「部活のキマリなんで」
「じゃあ仕方ないよなあ」
 オヤジも部則という免罪符を得て、それ以上の問答を切りあげる。
「長いのうっとうしいんで、短髪でお願いしま〜す」
 ――タンパツって・・・。
 せめてベリショって言えよ、と腹立たしい。
 確かに京介は経験したことのないロングヘアーをもてあましていた。
シャンプーとかドライヤーとか抜け毛とかメンドクセー、としょっちゅうボヤいていた。元の所有者があれこれ要求してくるヘアーケアにもうんざり気味で、
「切っちゃっていいか?」
と訊かれたりして、
「冗談じゃないわよ!」
とその都度、有理は真っ青になって、この無神経な「間借り人」を制止しなければならなかった。
 今回はからずも念願が叶った「間借り人」は、
「いや〜、やっぱ短い方がラクっすよね〜」
と好き放題抜かしてくれている。
ムカつくが、部則だからと観念する。恐るべし部則。単なる精神論好きな一公務員の思いつきに過ぎないのに、この執行力は何なんだ?
 しかし、次のやりとりは十七歳の少女を一気に奈落の底へと突き落とした。
「後ろ、どうする?」
「あ、刈り上げちゃっていいッスよ」

 ――刈り上げえええ〜?!

「バリカンとか使っちゃっていい?」
「全然OKです」

 ――バリカンんんん〜?!

「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
 あわてて割って入る有理。
「なんだ? 有理・・・じゃなくて2年B組のアイドル堀江京介君」
「刈り上げなんて勘弁してください! バリカンとか絶対ダメ!」
 必死で言い募る有理に
「オニイサン、この娘の彼氏さんかい?」
と床屋のオヤジ。
「え?」
 京介の姿の有利は固まる。
「い、いえ、そんなんじゃないんですけど・・・」
「う〜ん、確かに惚れた女が長い髪を切るってぇのは、男にゃ忍びないだろうけどなあ」
「い、いや、だからそんなんじゃないんですってば!」
 有理は窮地に陥る。ここで必死になって「自分」の髪型にこだわると、中目黒と堀江、デキてんじゃないの〜(ヒソヒソ)などとあらぬ噂がたち、
 ――もしかして、上条先輩の耳にでも入ったら・・・。
「オニイサン、顔真っ青だよ」
「もういいです」
 万事休す。
 有理は理髪台の勝ち誇ったような自分の顔を睨みつけると、沈黙した。手も足も出ない。

 とりあえず一句

 皆が愛で 有理がケアした ロングヘア 座りしままに 切るは京介

 シュッ、シュッ、と霧吹きで美少女の髪が湿らされていく。
 ――カット前にシャンプーしないの〜?
 美容院の常識が通用しない。
 オヤジは有理がこれまで何人にも許さなかった絶対領域に鋏をあて、

 ――うわあああ〜!!

という待合席でカットを見守る本来の所有者の心の悲鳴も虚しく、

 ジャキ、

とファーストカットを入れた。

 バサリ、

と水をたっぷり吸った髪の束がケープを叩く。

 その瞬間、鏡の中の美少女が

 カ・イ・カ・ン!

って表情をした。そりゃあ、何の愛着も未練もないのだから。こんな快感のみのバッサリはないはずだ。

 オヤジは少女の長い髪を、ジャキジャキジャキジャキ刈っていく。その鋏さばきには、いつも有理が髪を任せていた美容師さんのようなアーティスティックな繊細さは皆無である。
 大胆。
男性的。
職人。
 そんな形容が浮かぶ。
ただひたすら客の「短く」というリクエストに応え、鋏をふるいまくるオヤジに「漢」を感じずにはいられない。理容業界の暴れん坊将軍と呼びたい。
――なんて感心してる場合じゃないよ〜(つД`)
 サイドもバックも短く切り詰められる。粗切り、完了。
 数分前までの有理の所有物は、床に、ケープに、あるものはクッタリと、あるものは反り返って、見苦しく散っている。
 ――サヨナラ・・・(つД`)
 今の有理にできることは、ただ幼女時代からのパートナーの骸に手を合わせ、涙することだけだった。
「あのオニイサン、髪の毛に合掌してるけど・・・」
「熱心な仏教徒なんスよ」
ほっときゃいいんです、とロングヘアー生活から解放された断髪娘は、心底スッキリした〜、って顔をしている。

オヤジ、続いて、粗切りした少女の髪を短髪の形にする工程にとりかかる。
ジョキジョキジョキ、とゆっくりと耳の周りを気っていく。
――うわあ〜!
有理は頭を抱える。切り口、スッパリしすぎ。美容院ならもっとナチュラルな感じにしてくれるのに。
「お嬢ちゃん、度胸あるね〜」
と感心するオヤジ。
「やっぱ床屋ッスよね〜」
と腕白小僧に変身していく美少女。
「お、若い娘さんなのに話せるね〜」
「短い方がサッパリしていいッスよ」
「そうだよな〜。勉強にも気合い入れてうちこめるしなあ」
「いや、勉強はやんないッスけど」
「コノヤロウ(笑)」
「ハハハハ」
 「男同士」すっかり意気投合する二人。イヤ〜な予感がする。
「これからも大将の床屋来ますよ」
「ホントかよ〜」
「マジっすよ」
 ――来なくていい、来なくていいから!

 襟足に櫛があてられ、櫛からはみ出た髪を、

 チャッチャッチャッチャッ

とオヤジが鋏をトッカエヒッカエ、下から上へと刈っていく。
 心地良さげに目を細める少女と、それを小刻みに震えながら見詰める少年。
 ――うっ・・・うっ・・・。
 つい二十分前まではこんな頭にされるとは、神ならぬ身、予想だにできずにいた。でも、
 ――アタシのうなじ、結構キレイ・・・。赤ちゃんみたい。
そんな有理の微かな救いも、次の瞬間、木っ端微塵に粉砕された。
 オヤジが鏡の下の引き出しをあけて取り出した散髪器具。

 ――バ、バリカンキタ―――(゚∀゚)――――― !!!!!

 テレビのバラエティなんかでたまにやっている「罰ゲームで丸刈りコーナ」で、「やめて〜!」とか言いながらバリカンでジョリジョリ刈られてる芸人みて、「ダッサ〜イ」とゲラゲラ笑っていた。
 半年前、試合に負けた柔道部員たちが顧問に五厘刈りを命じられたとき、最後まで粘っていたクラスメイトの小杉君に執拗に「バ〜リカン! バ〜リカン!」とバリカンコールを送って、背中を押してあげた。小杉君が自分に惚れていると知りつつ。
 全ては、よもや、その汗臭そうな(お嬢さんの偏見)散髪器具の刃先が自分の髪にあたる日など来るまい、とタカをくくっていたから。

 ウィーン、ウィーン、ウィーン

 もう音聞いただけで悪寒がする。

 ウィーン、ウィーン、ウィーン

 大気圏に突入するロケットを見守るように、息をのみ、我が襟足に吸い込まれていくバリカンに目が釘付け状態。

 ジャリ、

 はぜる音がした。

 ――うがあ〜!

 バリカンの刃は襟足を呑みこみ、上へと遡っていく。ひと刈り、ふた刈り。バリカンが通過したあとには、タワシのような刈り跡が残る。タワシ部分の面積はみるみる広がっていく。





 ――うごおお〜!

 コーフンした。

 ――小杉君、アタシも明日から仲間だよ〜(TДT)

 耳がギョウザみたいになってる小杉、有理の彼氏にしたい男ランキングに圏外から一気に八位に。
 ――まあ、上条先輩の一位は揺るがないけどね・・・。
 ちなみに京介の順位はというと・・・それは秘密だ。

 オヤジは容赦なくバリカンを走らせる。何度も何度も。
嫌な予感は的中。
短髪になるのを喜んでいる少女の客に、オヤジも遠慮せず、魂をこめたバリカンカットに余念がない。
ジジジジ、ジジジ、

股間が、熱い!
 ――ちょっと、ちょっと、ちょっと!
 狼狽する。まさか自分がバリカンで髪刈られる姿を見て、○ッキするとは・・・。
 
――ド変態じゃないのよっΣ(゚Д゚ )

「どうした、有理・・・じゃなくて2年B組の後家殺し堀江京介君? なんかキョドッてるけど」
「い、いや、べ、別に・・・」
 有理が必死で股間の疼きと格闘している間に、断髪、終了。
「いや〜、サッパリした〜」
とほとんどスポーツ刈りに近い逆立った短髪に手をやって、満面の笑みを浮かべるオトコオンナに
 ――ドチラサマデスカ?
と虚ろな視線を送る有理であった。






二人、店をあとにする。
「ね、ねえ、京介」
 おずおずと口を開く有理。
「ん?」
 短髪娘が見上げる。
「あのさ」
思い切ってお願いしてみることにする。
「後ろ、触らせて」
「後ろ?」
「その・・・あの・・・バ、バリカンで刈ったところを・・・」
「触らせて、ってか?」
「う、うん・・・」
「別にいいけど」
 ヌッと突き出された後頭部を、有理は臆病に撫で、
 ――うわっ! ナニ、この手触り・・・ジャリジャリする〜! すごくキモチイイ!
 密かに興奮する。
「お前、なんで股間押さえてんだ?」
「い、いや・・・なんでもない。これはね――」
 有理が弁解しかけたところに、
「お〜い、堀江〜」
 犬を連れた上条先輩が立っていた。
「あ、上条先輩、チワーッス」
 「堀江」と呼ばれ条件反射で体育会系の挨拶をする少女に
「ゲゲッ! 隣にいる女は誰かと思ったら中目黒じゃんか!」
と上条先輩は目を白黒させて驚いている。
「どうもッス」
「どうしたんだよ、その髪型?」
「いや〜、映画研究部員に断髪令が下りまして、つい今しがたバッサリと(笑)」
「スゲーなあ! やるじゃん」
 先輩は短い髪が好みらしく、「中目黒有理」のカットしたての髪をクシャクシャかきまぜてハシャいでいる。
「カンベンしてくださいよ〜」
と「中目黒有理」はくすぐったそうに、首をすくめ、先輩の掌から逃れようとする。
 ――よし、上条先輩に気に入ってもらえた!
とガッツポーズをきめたいところなのに・・・
モヤモヤするのは何故だろう。「中目黒有理」が大好きな人に触れらているのに・・・どうして・・・こんなに胸が苦しいんだろう。

 ――なんでアタシ、自分に嫉妬してるのよ!

「堀江、お前、中目黒と付き合ってんのか〜?」
「い、いえ、全然そんなんじゃないです!」
 「堀江京介」はあわてて手を振る。
「付き合っちゃえよ」
「嫌です!」
「なに半ギレしてんだよ?」
「キレてないですよ」
長州力かよ、というツッコミを残し、上条先輩は去っていった。
「・・・・・・」
「どうした、有理? 怖い顔して」
「どうもしない」
と答えながら、有理の心中である決意が芽生えた。

 翌日、
「上条先輩、アタシ・・・じゃなくてオレを丸刈りにしてください!」
と「堀江京介」は野球部のロッカーで、上条先輩に頭を下げていた。
「なんで?」
 上条先輩は読んでいた雑誌から、顔をあげて怪訝そうな顔をしている。ちなみに、この先輩、すでに引退しているのに、毎日部室に入り浸っている。
「エ〜ト、これから野球部を背負っていく者として、頑張りたいんです(棒読み)。その意気込みを現すために、先輩に髪を切ってもらいたいんです」
「おおっ! 堀江! よく言った! お前最近、女みたいにナヨナヨしてたから、俺も心配してたんだが、そうか、やる気になったか! よっしゃ、気合い入れてやる!」
 先輩は腕まくりして、後輩(有理)の頭を押さえつけ、部室においてあったバリカンをグリグリ差し込んだのだった。
 ――ぬおお〜!!
 身体とは一日遅れでバリカンを体感した。テクニシャンの床屋のオヤジと違って、先輩はひどくヘタクソだった(笑)
 ――憧れの上条先輩に頭刈られてるうぅぅ〜!!
 ○ッキした。
「ちょっと! 上条先輩! ナニやってんスか?!」
 騒ぎを聞きつけて、ロッカールームの入り口から顔を覗かせ、あわてふためいている有理(京介)に、
 ――昨日のお返しだよ。
と舌を出す。でも本当の目的は、
 ――上条先輩に頭撫でてもらお(はぁと)

 丸刈りにされた。ザリザリという感触を楽しみまくる。
 ――よし!
 今日はガッツポーズをきめられた。
「堀江、よくやった、ご褒美をやろう(にっこり)」
「は、はいっ!(にっこり)」

 上条先輩のくれた「ご褒美」は二時間におよぶ個人ノックだった。
 もうダメです、と泣きを入れたが、
「お前、自分で頑張りたいって言ったんだろうが」
 男なら言ったことに責任をもて!とケツバットをくらった。
 ギャッ、とのけぞりながら、
 ――憧れの王子様にケツバットされる丸刈り頭のヒロインて絶対、少女マンガにはいないだろうな・・・。
と思った。
「先輩、やめてください! このままじゃ、有理・・・じゃなくて海辺野下深学園のお気楽王子、堀江京介君が死んじゃいます!」
「とめるな、中目黒よ。今は堀江が男になれるかどうかの瀬戸際なんだ」
「それは無理難題ッスよ!」
「中目黒、ここは女のお前の出る幕じゃない。いいから、ベンチに引っ込んでろ。掛布」
「はい、先輩」
「中目黒にミルクティーを買ってやれ」
「流石、上条先輩。フェミニストですね」
ダッシュでな、と後輩に小銭を渡し、パシらせる上条先輩。有理はやっぱり自分に激しく嫉妬する。
――なんでぇ〜(ノ_-。)

 そこへ・・・

「タッチャン」
「莉穂子」
 上条先輩の妹、莉穂子先輩が立っていた。「妹」と言っても、血はつながっていないらしい。
「また野球部〜? もう引退したんでしょうが。いつまでも先輩面して、後進のジャマしないの」
 アタシたち、受験生なんだよ、と妹に腕をひかれ、先輩は、わかったよ、と顰め面してバットをおき、
「堀江、ボール磨いとけよ」
「は、はいっ」
 寄り添いながら歩いていく二人の仲睦まじい後姿を見送る有理。

 ――もしかして・・・あの二人・・・。

 胸騒ぎがする。



次回予告

 上条先輩の好きな人って、まさか?! そんな・・・だって、あの人は先輩の・・・。嫌っ! 信じたくない! 衝撃の事実に揺れる乙女のハート。
 一応、保険かけて小杉君に唾つけとこうとしたんだけど、親友の下川結奈が実は小杉君に想いを寄せていることを知り、ダブルショック! 結奈、だってアンタ、小杉君の個人情報、ネットの匿名掲示板に書き込んだり、根性焼き入れたり、腐った牛乳無理矢理飲ませたり、不良グループ買収してボコらせたり、ブログ荒らして閉鎖に追い込んだり、女装オナニーさせたり、ハードゲイの友達紹介したり、散々イジめてたじゃない。乙女心って本当に複雑・・・。
 結奈の嫉妬を避けるため、アタシ(京介)はとっさに雷を怖がる芝居をして、彼女を油断させるのだった。
問題はそれだけじゃない。メインの二人が超短髪&丸刈りになっちゃったけど、読者ついてきてる? もしかして総スカン? 「二人の髪型を元に戻せ〜!」とか署名活動されちゃう? でももう無理だから・・・。

 次回 「変成男子」第十三話 「謎の転校生」
 ご期待ください!








(了)



    あとがき

 迫水です。
 断髪ジュブナイルシリーズの二発目です。
 SFには欠かせない「俺がアイツでアイツが俺で」設定で断髪を書いたらどうかなあ、という思いつきを基にトライしてみました。
 「自分の断髪を見るヒロイン」です。楽しく書けました〜。
 ただ、ヒロイン登場→身体入れ替わり→慣れない生活に苦労、とステップを踏んでいくのは、まだるっこしかったんで、「連載小説の1エピソード」という、ややこしい形で発表しました。
 結構好きです。




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