作品集に戻る


キョンキョンの如く


しゅ〇ぺい「実は俺、副業を考えててさ」

松〇寺「副業? どんな仕事なんだ?」

しゅ〇ぺい「夜のお店なんだけど」

松〇寺「ひゅう(口笛)、悪くはないな。だが、なかなか大変な仕事だぞ」

しゅ〇ぺい「そうなんだ、だから俺、今から店長を演(や)るから、お前に客を演(や)って欲しいんだ」

松〇寺「いいだろう。客だな? わかった。あ〜、開店したばかりの店だなあ。よし、ちょっと遊んでいこうか」

しゅ〇ぺい「いらっしゃいませ。今、スキンヘッドの女の子が参りますんで」

松〇寺「そんな趣味の奴なんて、意外にいるんじゃないだろうか! 例えばオレはスカトロフェチ、流れでカミングアウト! 性癖はジャングルと同じだ。奥が深い。趣味嗜好は人それぞれだ。十人十色、共存共栄していこう――さあ、時を戻そう



コロナ令和元年少子高齢化SMAP解散トランプ政権同時多発テロAKB東日本大震災政権交代リーマン・ショック懲役七〇〇年開設冬のソナタイラク戦争ゆとり教育9・11ミレニアムIT革命大不況エヴァンゲリオンオウム真理教阪神淡路大震災民族紛争コギャルドーハの悲劇冷戦終結週休二日制バブル湾岸戦争消費税天皇崩御となりのトトロ天安門事件東京ドームチェルノブイリ人口五十億突破ハレー彗星プラザ合意おニャン子クラブ日航機墜落怪人二十一面相ファミコン発売・・・・・・



 80`s!!!



 とある学校、5年4組の教室。

 今川弥生(いまがわ・やよい)はぼんやりと、前の席の伊勢美保子(いせ・みほこ)の後頭部を見ている。

 ――ホクロ・・・。

 美保子は天然パーマの髪を潔く刈って、ショートヘアーにしている。一ヶ月に一回、散髪する。

 うなじに大きめのホクロがある。潮の満ち引きによって、出現したり水没したりする小島のように、そのホクロは、美保子の髪が伸びれば隠れ、髪を切れば露になる。

 ――美保子チャン、髪切ったんだ・・・。

 何の気なしに思った。真白なうなじが眩しい。短い髪、夏は羨ましい。

 そう、もう夏!

 先週梅雨明けして、暑気と湿気がスクラム組んで、老若男女を苦しめている。

 夏!――ということで、髪を切る女の子たちも多い。

 正確には「切らされる」というべきか。

 小学生も高学年になれば、親たちも「調教師」の相貌を帯びてくる。

 着せ替え人形のように着飾らせ、長い髪を編んだり結んだりアレンジさせていたのが、幼女が少女となり、自我に目覚め、人形であることから脱しようとしはじめると、手綱を引き締めにかかる。

 「躾」として、娘の長い髪に鋏を入れることを強い出す。

 特に主婦連は横並び意識が強く、近隣の女の子たちが髪を短くしはじめると、

「じゃあ、うちも」

と思想なくそう考え、娘に髪を切らせようと躍起になる。

 パターンは決まっている。

 三段構えだ。

 まずは前髪を切るところからスタートする。

 目に悪い、とか、学校の「清潔検査」に引っかかる、とかあれこれ理由を設けては、親が手ずから鋏を取り、前髪を眉毛の高さで切り揃える。学校での視力検査の結果がよくなければ、鬼の首をとったが如く、それはもうバッサリいかれる。

 そうやって「バッサリ処女」たちに鋏の感触をおぼえさせ、耐性をつけさせる。処女たちも、前髪だけなら、と渋々譲歩する。が、これがとんだトロイの木馬なのだ。

 勢いづいた親は、続いて、ロングヘアーをオカッパ(ボブ)にさせる。

 こうして、乙女の長い髪への執着を、バサッ、髪ともろとも断ち切らせる。

 鋏による侵犯はとどまることを知らない。間を置かず、今度はオカッパからショートヘアー(マッシュルームカット)へ。

 かくして「躾」は完了する。



 弥生は両親の切れ切れ攻勢に抵抗している真っ最中だった。少女マンガのヒロインを気取って、ロングヘアーを死守している。

 おかげで髪はヒップまである。

 正直、

 ――切ってしまいたい!

と思うこともないわけではない。特に夏場など、そんな衝動が脳裏を横切ったりもする。

 前の席の美保子の爽やかな髪を見ると、尚更だ。

 しかし、一度切ってしまうと、もうこの長さにまで伸ばすことは困難だろう。



 チャイムが鳴った。

 休み時間になり、弥生は教室の隅っこで、友人たちとおしゃべりする。

 美保子の髪の話題になる。

「伊勢さん、髪切ってたね」

「そうだね。夏だしね」

「うちもお母さんが切りなさいってうるさくってさぁ」

「参るよね」

「知ってる?」

 友人の一人が声をひそめた。

「伊勢さんてバリカンで髪、切ってるらしいよ?」

「バリカン?!」

 思わず大きな声を出してしまう弥生。

 友人たちに、しーっ、と制せられ、あわてて口に手をあてる。しかし、ドキドキがとまらない。

 バリカンなんて男の子の頭にあてられるものだろう。そういう固定概念が弥生の頭にはある。女の子がバリカンなんてありえない。

 そのことを口にすると、

「弥生チャン、遅れてるぅ〜」

と嗤われた。

「キョンキョンだってバリカンで髪切ってるらしいしね」

「キョンキョンって誰?」

「アイドルの小泉今日子だよ」

「ああ」

 そんなアイドルもいたっけ、と記憶の片隅をまさぐって、拾い出す。弥生は芸能界については疎い。

 ただ、小泉今日子のことは、その短い髪が印象に残っていた。

 ――あの髪、バリカンで切ってるんだ・・・。

 でも実際、バリカンを使っている女子は、クラスで美保子ただ一人らしい。

「伊勢さん、勇気あるよね」

と言い合っていると、チャイム。皆めいめい自分の席に着く。



 よく心理的な革命後、「景色が変わった」とのたまう人がいるが、弥生がまさにそれだった。

 顔をあげれば、美保子の刈り込まれた後頭部が。10分前とは「鑑賞ポイント」が激変していた。

 ――これ、バリカンで切ってるんだ・・・。

 そう思うと、なんだか背筋が伸びる。しげしげと見入ってしまう。確かに襟足の辺りは、男子の丸刈り頭同様、タワシみたいになっている。惚れ惚れしたりもする。

「じゃあ、ここを、今川さん、読んで」

と教師に指名されても気づかないほど、弥生は美保子の襟足に惹きつけられていた。

 バリカンというものが、ぐん、と自分に近づいたような、そんな心持ちにすらなっていた。



 学校から帰宅すると、同室の姉の本棚から、アイドル雑誌をあるだけ引っ張り出して、パラパラと小泉今日子の記事を捜索した。

 ばっさりショートヘアーの元気娘、というイメージで売り出しているらしい。

 記憶通りの髪の短さだった。

 自分を睨みつける10歳の少女にも、キョンキョンは太陽のようなスマイルで応えている。

 何より、近況報告的な小さな記事の内容は、弥生の胸を激震並みに揺さぶった。

 髪伸ばそうとしてたんだけど、「うっとおしいなあ」ってバリカン入れちゃった。

とのキョンキョンの「肉声」に、

 ――バリカン入れちゃった

 ――バリカン入れちゃった

 ――バリカン入れちゃった

 ――バリカン入れちゃった

とまるで箴言のように、脳内リピートされる。

 「バリカンを“入れる”」などという言語が、この地球上に在ったことに、弥生の小さな世界は大いに揺らぎ、傾ぐ。

 反射的に自分の襟足にバリカンが“入れられる”さまを想像しかけ、

 ――ダメダメダメ!!

 弥生は狼狽して、その想像を突っぱねた。自分の中のタブーがいとも容易く突き崩されそうになって、懸命に頭から振り払おうとする。しかし、胸の鼓動は激しく鳴り続けている。

 この衝撃を、弥生は家族には黙っていた。ヤブヘビになりそうだからだ。この件だけでなく、髪についての話題を、家庭では極力避けている弥生だ。

 とまれ、この日弥生は初めて芸能人のヘアスタイルを、明確に意識したのだった。



 意識すると、やっぱり景色が違う。

 登校するまでに、キョンキョンカットのお姉さんを六人も見かけた。

 ――流行ってるのかなぁ。

と思い、同時に、

 ――あのお姉さんたちもバリカン“入れた”のかな。

と思う。

 教室では教室で、美保子の襟足を、ジーッ、と凝視する。

 不快指数が跳ね上がる中、ちょっとだけ長い髪の毛が鬱陶しい。ほんのちょっとだけ。

 休み時間、窓際の席で男子たちが駄弁っている。

 小笠原龍之介(おがさわら・りゅうのすけ)の姿もあった。

 このガキ大将は、いつも、

「この女コジキ〜」

と弥生の超ロングヘアーをグイグイ引っ張ってくる。少女マンガのヒロインのつもりなのに、龍之介にかかれば、ホームレス扱いだ。悲しい。

「むさくるしい髪、切れよ」

とも罵られる。辛い。

 でも、弥生は龍之介が大好きだ。いじめられても、暴言を吐かれても、惚れた弱み、嫌いになれないでいる。

 開けっ放しの窓から入ってくる風に乗って、龍之介が話している声が弥生の耳にも届く。好きなアイドルの話をしているらしい。

「オレはキョンキョンが好きだな。断然キョンキョン!」

と龍之介は力説している。

 弥生は、ハッとなる。

 ――もし、私もキョンキョンみたいな髪の毛にしたら――

 龍之介は振り向いてくれるだろうか。ふと思った。

 しかし、この気持ち、突き詰めていくと、龍之介の好みは口実に過ぎなくて、本当は髪にバリカンをあててみたいという、M的な好奇心に駆られている弥生がいる。



 次の日は土曜で半ドン。

 弥生は午後、近所の電気屋に行った。

 そうして、バリカンという散髪器具を初めてまじまじと見た。

 電気バリカンは、10歳の少女の目にはなんだか、ひどくグロテスクに映る。

 ギザギザの刃。

 これが、キョンキョンや美保子の頭と接触しているのか、と怖々見る。ドキドキがとまらない。

 あんまり長い時間見つめていたので、

「お嬢ちゃん、バリカン買うの?」

と店主に訊かれた。

「い、いや、そ、そういうわけじゃ・・・」

 弥生はしどろもどろになり、そのまま逃げるように店を去った。興奮で頭がクラクラしていた。



 それから一週間が経ち、二週間が経った。

 前の席、美保子のうなじのホクロは徐々に隠れはじめている。

 一日、一日、と弥生の中の好奇心は肥大している。恐怖心を凌駕せんとしている。

 ブラウン管に小泉今日子が映っていたら、注視する。彼女の短い髪をウットリと見つめる。

「あれ、弥生、キョンキョン好きなの?」

と年子の姉に言われ、別に恥ずかしいことではないのだが、

「いや、べ、別に」

とすっとぼける弥生だ。

 ちなみに早熟な姉はYMOの大ファンで、レコードを買って、部屋で繰り返し聴いている。同室の弥生がウンザリするほど。

 そんな姉を母は、YMOの新譜を買ってあげるから、と「買収」して髪をオカッパに切らせていた。こういう母の情熱の奈辺にあるやは、弥生にはちっとも理解できない。

 理解できなくとも、母の情熱は次は弥生に覆いかぶさってくる。

 その頃には、弥生自身も、持て余し気味の気持ちなのだけれど、

 ――切ってもいいかも。

と選択肢のひとつに「断髪コース」が加えられていた。そう、キョンキョンみたいに。

 無論口外はしない。決心はまだつきかねている。それに、髪を切るのは、母に迎合、あるいは屈服したようで、生意気盛りにさしかかっている弥生には、なんとも面白くない。



 夏休みが近づいてくると、通学路で、街で、キョンキョンカットの女性が増殖していく。暑気払いだろう。

 運動部系の娘が多い。似合っている娘もいれば、目を背けたくなるケースもある。

 ――私はどうだろう。

とハンドミラーで吟味してみる。

 ゲジゲジの太い眉毛、垂れ目で団子鼻で、口の大きなファニーフェイスがこっちをうかがっている。

 鏡の中の自分をキョンキョンカットにしてみる。シミュレートを繰り返した結果、

 ――似合うかも・・・。

とやや強引に思った。

もう我慢できない。

「お母さん、髪切りに行くから、美容院代ちょうだい!」



 母は自分も美容院まで同伴するとしつこく言ったが、弥生は頑強に言い張って、一人で近所の小さなヘアサロンへ向かった。

「短く切ってもらうのよ。じゃなきゃ家に入れないからね」

という母の言葉を背に。今に見てろよ。

 物心ついて以来初となる美容院。

 友達の沢子のお母さんが切り盛りしていて、弥生が入店してきたら、

「あら、弥生チャン」

と目を丸くしていた。だいぶ意外そうだった。

「髪の毛切りに来たの?」

「うん」

「丁度お客さんがいないから、すぐできるわ。ここに座って」

「はーい」

 弥生はベルトコンベアーにのせられたように、すんなりと入り口からカット椅子へ。心臓がバクバクいっている。

「今日はどうするのかな?」

「キョンキョンみたいにして」

「え?! あんな短くしていいの?」

「うん、こんなふうに」

と姉から借りてきた雑誌をひろげて見せる。

「お母さんは知ってるの?」

「短く切って来いって言われてるから」

「後ろも刈り上げちゃっていいの?」

 「刈り上げ」という単語に弥生の心は一瞬ザワつくが、むしろ望むところだ。

「うん、いいの」

と言った。言い切った。その瞬間、すさまじい解放感が、弥生の小さな身体を駆け抜けた。

 ――よっしゃあぁぁ!

 自分で自分を褒めてあげたい。

 だけど、ヒップまでの髪の毛に、鋏が入れられ、ザクザクと粗切りが始まると、途端に不安が襲ってきた。

 沢子ママは一見、無造作に、弥生の超ロングを切り離し、切り払いしていく。

 たちまちのうちに、右側の髪の毛が消えた。

 続いて、

 ジャキジャキッ、ジャキ、

 電光に照り映える左の髪の毛が断たれ、ケープを叩き、床一面に散らばっていく。

 ――あっ! あっ!

 あわただしく滑り去っていく髪も毛たちに、クッキリ浮かび上がる顔の輪郭に、弥生は慌てふためく。何しろ初めての体験だ。

 とうとう耳がでるほど刈り詰められてしまった。

 前髪も短く作られた。

 ジョキジョキ、ジョキジョキ、ジョキジョキ

 鋏は左へ左へ横断、弥生はグッと目をつむり、心の動揺に耐える。

 ジョキジョキ、ジョキジョキ、ジョキジョキ

 念入りに切り揃えられる。

 パッと目を開くと、

 ――誰なの?!

 知らない女の子が目の前にいた。ゲジゲジ眉毛がクッキリと露出していた。

 後ろ髪もギリギリまで刈り込まれる。

 ジャキジャキジャキ、ジャキジャキジャキ

 キョンキョンみたいに!とハイテンションで乗り込んできたけれど、断髪がすすむにつれ、現実と向き合わねばならなくなる。

 ――キョンキョンと全然違う!

 ションボリ顔のオトコオンナの髪は、さらに短く整えられる。

 チャッチャッチャッチャ、チャッチャッチャッチャ、

 後ろ髪を切れるだけ切ると、いよいよ――

 ウィーン、ウイーン

 ――うはっ、バリカン!!

 10年の人生で、これほど心拍数が跳ね上がったことはない。不安、興奮、緊張、etc・・・。

 スッ、とうなじにバリカンの刃の感触。そして一気に、

 ジャアァァアァアァ!

 バリカンは飢えたオオカミのように咆哮し、弥生の襟足に噛みつき、処女髪を問答無用にひっぺがす。

 また、うなじに金属が触れ、

 ジャアアァアァァ!

 ――これがバリカンの感触か!

 何度も何度も空想しては、ドキドキしていたのを、今現実として後頭部に甘受している。

 ――ひいぃ! 私も今日から美保子チャンやキョンキョンと「バリカン仲間」だよおぉ〜!

 刃は段々生温かくなっていく。

 うなじに、後ろ頭に、沢子ママの息をハッキリと感じ取る。

 この日本の片隅で、今日もキョンキョンに追随する少女がまた一人。

 バリカンでたっぷりと刈られ、また鋏で、

 チャッチャッチャッチャ、

と微調整。

「こんな感じでどう?」

と言われ、鏡をまじまじと見る。

 ――うーーーーーん・・・・・・

 微妙だ。

 弥生は鏡に映し出される新しいリアルに、絶句する。

 正直、納得いってない。失望した。

 が、覆水盆に返らず、受け容れるしかない。

「カッコいいわよ」

と沢子ママは褒めて(なぐさめて?)くれたが、弥生は暗い表情のまま、店を後にしたのだった。



 店を出るなり、恐る恐る襟足に手をやった。

 ジョリ、とmm単位の髪が指の腹を刺す。

 撫でてみた。

 ジョリジョリする。

 この感触に弥生は例えようもない快感をおぼえた。機関銃をぶっ放した薬師丸ひろ子のように。

 テンションは一転、上を向く。この年頃の女子は気分の浮き沈みが激しいのだ。

 後頭部をさすりさすり、

「タンタンターン、タンタラタンタカタンタカターン」

と「ライディーン」を口ずさみながら、弥生は家路についた。



 帰宅したら騒がれた。学校でも騒がれた。

 母は、何もそこまで、と驚き呆れていた。

 姉は、

「カッコいいじゃん」

と褒めてくれた。

 翌日あっけにとられているクラスメイトに、

「なんで髪の毛切ったの?」

と口々に尋ねられ、弥生は言ったものだ。

「もう夏だぜい!」

 美保子とも初めてちゃんと話した。

「今川さん、やったね」

「うん、やっちゃった」

「あたしももうそろそろ髪、カットしに行かないとな〜」

「勿論刈り上げるんでしょ?」

「うふふふ」

「今度一緒に美容院行こうよ」

「考えとく」

 愛しの龍之介には、

「チ〇コ頭」

とデリカシー皆無のあだ名をつけられた。百年の恋も冷める。

 ――私が「チ〇コ頭」なら、アナタの大好きなキョンキョンも「チ〇コ頭」ってことになるんですけど・・・。

 結局は顔か、と非情過ぎる結論が導き出される。弥生、ガックリ。

 でも、心なしか髪を切って以来、龍之介は憎まれ口をたたきつつも、さりげなく優しくしてくれる。

 龍之介にしきりにイジられ、表向きは、やめてよー、と拒んではいるが、内心、オイシイ、と喜悦している。SとM、両者の波長はピッタリだ。

 キョンキョンは今、主演映画の撮影中。封切したら一緒に観に行こう、ととうとうデートの約束まで漕ぎつけてしまった。ヘアカット効果か?

 まだまだ先の話なのに、

 ――どんな服着ていこうかな〜。新しいお洋服買おうかなあ。

と色々考えてニヤニヤ。

 ――そうだ! 忘れちゃいけない!

 クラスの他の女子が、自分みたく髪を切らないように止めて回らなければ。

 ――特にA子チャンとB子チャンとC子チャンとD子ちゃんには。

 クラスのカワイイ女子がキョンキョンカットにしたら、龍之介に乗り換えられてしまう恐れが大だ。

 こまめにカットしよう。当然バリカンも入れよう。

 ――かわいい仕草もおぼえて、ニキビ対策もして、オシャレもして。

 一人のカントリーガールが今、レディーに脱皮しようとしている。刈り上げ頭を夏空に晒しながら。



(了)





    あとがき

 いかがだったでしょうか?
 今回は「昭和なお話」です。なんだか、昭和の頃のお話の方が、書いてて楽しいです♪ すっごい子供の頃なのに。。無性にノスタルジックな気持ちになります。
 小泉今日子さんの「バリカン入れちゃった」発言は本当です。まだ性に目覚めていない子供だったんですけど、近所のお姉さんに見せてもらったアイドル雑誌に載ってて、ものすごい衝撃を受けました。
 昔のショートの方が、バッサリ感、清涼感、変身度、それゆえの賭博性が半端じゃなかったです。
 その後、「フェミニン」で「ナチュラル」なショートヘアーが台頭して、女の人にはありがたいんでしょうが、昭和生まれの断髪フェチにはぶっちゃけ面白くない。
 小泉今日子さんももう50歳くらいかな? 未だ第一線で活躍しているのがスゴイ。今後の益々の発展をお祈り申し上げます。・・・ってキョンキョンもこんなフェチ野郎に祈られたくはないだろうな。。
 と、自虐的になったりもしていますが、80年代は管理教育とか失恋断髪とか、フェチ的にネタの宝庫なので、これからもこの鉱脈を掘りすすめたく思っています。
 お付き合い頂き、本当にありがとうございました(*^^*)(*^^*)



作品集に戻る


inserted by FC2 system