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床屋DEデート


 夜。とある賃貸マンションの一室。そう、ここが本稿の舞台、濱中家。
 どちらかというと冴えない月給取り・濱中サトルが、風呂上がり、サスペンスドラマとビールでくつろいでいると、
「あー、髪伸びたなぁ」
と妻の礼香が洗面所にて、聞こえよがしにボヤいているのが、耳に入った。
 ――催促されてるし。
とわかりつつも、薄ぼんやりビールをなめていると、また礼香が、
「そろそろ切りにいかなくっちゃなぁ」
とやはり夫の耳に届くよう、声のボリュームを設定して、「独り言」を呟いている。
 そんな礼香の髪はショートの髪がやや伸びた短めのボブ。
「こんなにボサついちゃったら、みっともないわ〜」
との本人の言だが、確かに髪は上手くまとまらずにはいるようだが、見苦しくはない。
 しかし、礼香はしきりに散髪の必要を、まわりくどくサトルに訴えている。癇性な礼香はショートカットの髪が少しでも伸びると、落ち着かず、短く切りたがる。それに、目的はヘアーカットだけではない。
「わかったよ」
 サトルは妻に屈した。
「明後日は”床屋デート”な」
「やったー!」
 遠回しの催促が功を奏して、礼香はことさらに、年甲斐もなく、小学三年生のように、ピョンピョン飛び跳ねて、その喜びを表現してみせる。そして、
「貴男も髪伸びてるじゃない。キチンとしないと。営業職は身だしなみ第一だからね。時間は何時がいい? やっぱり午後だね。それから、カットが終わったらご飯行こっ。たまには奮発してフレンチ、そう、フレンチレストランにしましょ! 駅から少し離れてるけど、ホラ、あの、国道を曲がって、ツタヤがあるところの、そうそう、そこに最近フレンチレストランができてね、フジイさんの奥さんから聞いたんだけど、本場のシェフが経営してて、美味しくて値段もリーズナブルなんですって。OK? じゃあ、明日のうちに予約を入れておいた方がいいよね。私、電話しとくわ」
 マシンガンのようにまくしたてられ、サトルは圧されに圧される。
「頭もサッパリして頂くフレンチは美味しさ倍増よ」
 両指を重ね合わせ、うっとり夢心地の礼香に、
 ――コイツも変われば変わるもんだ。
 サトルはしみじみと思う。

 元々出会ったときには、礼香の髪は長かった。肩甲骨を覆うほどの黒髪のストレートロングだった。いかにも純朴そうな良家の子女風だった。少女の頃から一貫して、その長い黒髪を維持しつづけていた。だから、当然、サトルと付き合うようになってからも、その髪型でいた。
 だが、実はサトルはショートヘアーの女性が好みだった。それも、少年のようなベリーショートが理想だった。学生の時分、ボーイッシュなベリーショートのアイドルに夢中になっていたことがあり、現在でもそんなヘアースタイルに心惹かれていたのだった。
 だから、恋人時代から礼香に髪を切らせたがった。
 しかし、礼香は髪を切るのを嫌がりぬいた。いくら彼氏のサトルにせがまれても、頑として首を縦に振らず、長い髪のままで通していた。
 あの手この手、押したり引いたり、とさまざまな手練手管の限りを尽くして、希望を叶えようとしたが、徒労に終わった。あんまりしつこく断髪をすすめてフラれては元も子もないし。
 髪の件は大停滞していたが、その他の面では順調すぎるほど順調で、一年半の交際を経て、サトルはついに礼香にプロポーズ、あとは言わずもがな。
 プロポーズにあたり、サトルは一世一代の買い物をした。ダイヤモンドの指輪。ありったけの愛とお金をこめて、礼香にプレゼントした。
 礼香のハシャぎようといったらなかった。「金色夜叉」の昔からダイヤモンドは女性のハートをつかんできた。マリリン・モンローも、「Diamonds are a girl's best friend」って歌ってたし。礼香も例外ではない。ダイヤも嬉しいし、サトルの気持ちも嬉しい。ついには、
「貴男のお願い、ひとつだけ何だって聞くわ。絶対に聞く」
とまで言い出した。
「ホント?」
 未来の夫に念を押され、
「うん、ホント!」
と礼香はうなずいた。
「絶対に?」
「ええ」
「何でも?」
「聞くわ」
「じゃあ――」
「なぁに?」
「髪、ベリショにして」
「・・・・・・」
 礼香は大いに鼻白んだが、約束は約束、それに高揚もあって、だから、
「わかったよォ」
と明るく了承した。ダイヤモンドの通力か。思わぬところで、サトルの宿願は叶った。そういうものなのだろうか。
「切ってくれるのか?」
と目を輝かすサトルに、
「切る切る」
 ただし、と礼香は条件をつけた。結婚式には長い髪で臨みたいので、断髪は式の後にして欲しい、と。
 それくらい造作もない、とサトルは了承した。合意成立!

 そして、華やかな式は終わり、新居に移って、新婦は新郎に付き添われて、近くのカットハウスへ。
 礼香はサトルの言いなりの髪型をオーダーした。
「随分バッサリといっちゃいますねえ」
と女性の美容師は新婚ホヤホヤの夫婦を交互に見て、二人のような客もいるのだろう、事情を察したらしく、顔をほころばせていた。
 礼香の髪は、サトルの好みの長さ(短さ?)に切り落とされた。
 まずはブロッキングして、シャッシャッシャ、とコメカミのあたり、その横の延長線上にカットされた。美容師のハサミに寸分の迷いもなく、シャキシャキシャキシャキ、勢いよく髪は断たれ、バサバサバサッッ!とスコールのように盛大に落ち、逆サイドの髪も、ジャキジャキ、ジャキッジャキッ!
 既婚の美容師は、髪を切りながら、新婚の礼香に節約術や夫の操縦術等をレクチャーしてくれたものの、人生最大のヘアーカット真っ最中の礼香はそれどころではなく、表情をこわばらせ、ああ、とか、へぇ、とか生返事をするのが精いっぱいだった。
 サイドの髪と並行して襟足も刈りあげられた。ジャキッ、ジャキッ、ジャッキ、とハサミが音を立て立て、猛然と礼香のうなじを遡っていく。耳を出すため、その周りもグルリと切り抜かれた。
 クリップがはずされ、ブロックされていた髪がダラリ垂れ落ち、刈り込まれた両サイドや襟足を覆う。礼香はふたたびロングヘアーに。しかし、それらの外髪も、たちまち美容師のハサミにくわえ込まれ、ジャキッ、ジャキッ、ジャキッ、ジャキッ――短く断ち切られ、床へ――バサッ、バサッ! そう、少女時代から他から愛でられ、自らも慈しんできた長い髪は、哀れ、礼香の許を去り、大量の廃棄物になりぬ。
 前髪も眉上――額がやや出るくらいにまで、詰められた。
 仕上げのカット。髪のあちこちにハサミが入れられる。チャッチャッチャッ、チャッチャッチャッ、とハサミが鳴る。もはや目ぼしい切り余しもなく、ハサミはわずかな毛を挟むのみで、チャッ、チャッ、と刃と刃がカチ合う音だけが響く。
 そんな金属音を聞きながら、礼香は頬を上気させ、恍惚とベリーショートになった自分を見つめていた。口角が少しあがっていた。

 この日以来、礼香はベリショをキープしている。
「すごく楽チン♪♪ 今まで髪長く伸ばしたのがバカバカしくなるわ。切って大正解!」
と今の髪型を賛美している。かなり気に入っている。繰り返しになるが、癇性なので、少し伸びれば、見苦しい、うっとうしい、とすぐにカットに行く。度胸もついて、さらに短くハサミを入れさせることも、たびたびだ。
 そうして、礼香は気づいた。
 自分が髪を切ると夫が昂ることを。
 軽度のフェチらしい。サトルにそんな自覚はあまりないが、礼香が美容院に行った日の夜には必ず礼香を求め、激しく燃える。礼香が普段より短い髪に切って(切りすぎて)くると、昂奮の度合いはいよいよ増す。切り詰められた髪や、スッキリ出たうなじに唇をあて、息遣いも荒く、何度もまぐわう。
「もう私、二度と髪を伸ばそうとは思わない。ベリショのまま、貴男と添い遂げるわ」
との礼香のリップサービス(一応本音だが)に、サトルはますます猛り狂う。果てた後も、名残惜しげに、いつまでも妻の髪を愛撫する。
 同窓会などに顔を出すと、
「礼香、髪切ったの?!」
と必ず驚かれる。
「うん、短く切ってサッパリした」
と頭に手をやりつつ、かつての級友たちに明るく微笑む礼香だ。
 髪を切ったのは夫のリクエストで、
「短い方が主人が喜ぶのよ〜」
と意味深な目つきで話すと、未婚の旧友も倦怠期の旧友も、いいなぁ、と羨望の眼差しを向けてくる。羨まれ、礼香は得意になり、
「ミーちゃんも髪切ろうよォ〜。人生変わるぜぇ〜」
とロングヘアーの友人を短髪仲間に引き入れようとしたりもする。
「『断髪力』でも読んだのかよっ!」
とツッコまれたが、礼香はそのベストセラー本の存在など知らない。知らずとも十分幸せだ。

 そんな礼香の床屋デビューはいつだったろうか?
 髪をショートに切ってから、二年弱が経過した頃だったろうが、詳しい時期はサトルも礼香も記憶が曖昧だ。
 礼香の方から床屋行きを望んだ。いつも床屋で髪を整えているサトルを見て、好奇の虫が疼いたのだ。お互い軽いノリで、じゃあ今度一緒に行こうか、という話になった。たしか、そうだ。
 間もなく二人連れだって、サトルの行きつけの床屋のドアをくぐった。
 男性客ばかりで最初は戸惑っていた礼香だったが、カットの腕は確かだし、それに顔剃りをしてもらったり、カット後に店の大将――男性の力強い手で念入りにマッサージしてもらったりで、礼香は一遍で床屋党になってしまった。
 サトルはサトルで、妻の散髪を間近で見守っていて、ギンギンになってしまっていた。自己のフェティシズムを初めてはっきりと自覚した。
 その夜、二人が生まれ変わったかのような気分で、熱烈に、愛の言葉、愛の行為、を交し合ったことは、語るも野暮だろう。
 バリカンデビューも、ほとんど同時だ。
 ハサミで刈りあげられて、予告もなしに当たり前のように、ヴイイイィィン、と大きなバリカンがうなじにあてられ、走らされ、その慣れないバイブレーションに礼香は目を白黒させ、落ち着かない気持ちでいたが、最後の方はその振動に頭を委ねきり、なんだか晴れ晴れとした心持ちになっていた。この感触を知らない女子は人生損してるかも、とさえ思った。
 サトルもバリカンで刈られる妻にアツイ視線を注いでいた。その夜もすごかった!
 そんなこんなで二人は月一の床屋通いを続けている。
 礼香はカットの順番を待つ間、店の漫画を読んでいる。ボロボロの「沈黙の艦隊」を少年のごとくワクワクしながら、もう三分の二近く読みすすめている。
「なあ――」
とサトルが話しかけても、
「今話しかけないで。いいトコなんだから」
とピシャリ言うほど熟読していることもしばしば。
 いつしか、店を出た後、ショッピングをしたり、お茶を飲んだり、あるいは――恋人気分を味わうため、ラブホに直行して刈りたての髪の互いを愛で合ったり、といった流れができて、サトルと礼香の間で、「床屋デート」という造語が交わされるようになった。
 髪を切り、フレッシュな気分で寄り添いながら――ときには手をつないだりしながら、街を歩き、買い物や食事を愉しむ。ベリショ妻のおねだりに、サトルが服やアクセサリーの購入を許すのもしょっちゅうだ。夜は夜で情熱的に――
 勿論二人だってケンカすることはある。
 そんなとき、礼香は無性に髪を切りたくなる。髪を切ることで、心の中ムクムク湧きいずる黒雲を、きれいさっぱり払いたく思う。
 気づけば床屋へと足が向かっている。感情と策略が、ハーフハーフ。
「一人で散髪に来るたぁ珍しいねえ」
と大将は笑いながら接客してくれるが、余計な詮索はせず黙々と――これがありがたいところだ――カットしてくれる。「いつもより短く」という注文通りに、ザクザク、ジョリバリ、と仕上げてもらう。
 今日こそは、大黒柱の威厳ってやつを女房に知らしめてくれん、と息巻いて、サトルは会社から帰宅するが、
 ――髪切ってるし〜!!
 バッサリと切ったばかりの短髪でキッチンに立っている礼香に、闘志はあえなく吹き飛び、
「ゴメンね、礼香〜。俺、今朝はちょっとキツく言い過ぎちゃったね〜」
とデレまくり、背後から礼香に抱き着く。
「ジャマ! あっち行ってて」
「そんなつれないこと言うなよ〜。愛してるから、ね? 俺が悪かったよ。今回は礼香の言うとおりにするから、ね? ごめんね。反省してるから許してくれよ〜」
と妻に全面降伏、てんでだらしがない。フェチの悲しさよ。
 とにもかくにも、ヘアーカットという行為が、夫婦の生活の潤滑油となり、愛と平和をもたらし、二人の絆を、より強く、より深くする役割を果たしてくれている。これは事実だ。

 で、話は冒頭に戻る。
 礼香はフレンチレストランに予約をいれ、翌日サトルと一昔前のJポップを口ずさみながら、ウキウキと「床屋デート」に出発。
 休日なので店は混んでいる。礼香は相変わらず紅一点。れいによって、「沈黙の艦隊」の続きを読む。これを読み終えたら、次は横山光輝の「三国志」にトライしようか。
 髪がうるさい。礼香は漫画のページをめぐりながら、神経質に、前髪、横髪、と何度もかきあげる。
 カット中のチビっ子に目をやり、
「私もあれぐらいにしようかなぁ」
とサトルの耳元で囁く。
「え?! スポーツ刈り?! マジかよ?!」
 サトルは驚いて、
「さすがに短すぎるだろう」
と困惑の態。実は礼香の父(元ラガーマン)は結婚後の娘の髪がどんどん短くなってきていることに、だいぶ不満らしく、
「サトル君、もしかして、君が礼香をそそのかしているんじゃないだろうね。昔から、髪は女の命というぐらいだ。そこら辺くれぐれも、心に留めおいてくれよ」
と恐い顔で釘を刺されまくっている。礼香がスポーツ刈りになどしたら、義父に殴られるかも知れない。が、フェチとして「覚醒」してしまった身としては、スポ刈りの妻を思い浮かべ、股間が大変なことになっている。一応制止はしたが、
「う〜ん・・・どうかなぁ・・・スポ刈りか〜・・・う〜ん・・・」
とその語気は弱々しい。結果、ウヤムヤのまま、カットの順番がまわってきた。
 夫婦並んで理髪台に腰を沈める。
 サトルの髪は若い男店員、礼香の髪は大将が担当する。
 礼香は堪え性もなく、
「スポーツ刈りにして下さい」
と嬉々としてオーダーし、隣に座るサトルをドキドキヒヤヒヤさせる。
 思い切った要望に、大将はとりあえずは、
「いいの?」
と確認したが、
「いいんです。お願いしま〜す」
とテンション高く言われると、存外あっさりと引き受けていた。
 サトルは夫婦の希望&欲望を優先させることに決めた。
 ――お義父さんには殴られよう・・・。
 ジャキッ、ジャキッ、と妻の髪が威勢よくはさまれる音が、サトルの耳朶を心地よくうつ。あんなにロングヘアーにこだわり、断髪を嫌悪していた、バッサリ処女だった妻が・・・と思うと、それがスパイス的な効果をもたらし、より一層昂奮する。
 バリカン様の露払いをすべく、ハサミは「長い髪」を切り込んで、ジャキジャキ、ジャキッ――短く、もっと短く、と切り捨てられていく。
 「イケメン」風になっていく鏡の中の自分を、礼香はウットリと見据える。テンションがどんどん上がる。
 そうやってつくられた散切り頭に、バリカンをあてられた瞬間たるや、テンションは最高潮に達し、はしたなくも少しチビってしまった。イケメンから一匹の「雌」の顔になっていた。
 ヴイイィィイイィン ジャアアァアアァアア
 後頭部が刈られた。
 ヴイイイイィィイン ジャアアアァァァアア
 短い髪がキビキビと刈られていく。
 大将は腕をふるい、希少な女性客を変身させていく。
 ビッシリと後頭部が刈りあがり、次は側頭部を刈る。
 バリカンが走る。
 ヴィイイィィイイイン ジャアアアァアァァアァ
 そういえば、襟足以外にバリカンが触れるのは初めてだった。
 客たちの無遠慮な視線を感じる。それらが、礼香に七分の高揚と、三分の恥じらいとをおぼえさせる。
 サトルもサトルで自分の散髪より、礼香の散髪の方が気になって仕方ない。ヴイーン、ジャー、と妻の頭を走るバリカンの音に意識が向く。激しく欲情する。
 バリカンは礼香の髪を、スポーツ刈りの長さに整えていく。ジャアァアアァァアアア、と髪が削がれ、剥かれ、除かれ、刻まれ、切り離されて、バラバラ、バラバラ、とケープに滴り落ちる。
 ヴイイイイィィイィィン ジャアアァァアアァア
 容赦のないバリカンに、変貌を遂げていく自分に、礼香の花園で甘い蜜があふれかえる。いつの間にか夫のフェティシズムに感化されてしまったらしい。怖い怖い。
 前髪もトップの髪も気づけば刈られまくっていて、ミリ単位で縮められた両サイドの髪に挟まれ、1、2センチほどの長さの中央の髪が、浮き出るように残されていた。
 バリカンでのカットを終え、大将はまたハサミをとった。そうして、チャキチャキ、チャキッ、チャキッ、と入念に刈り整えていった。頭上で鳴るハサミの音が小気味よい。細かな毛が、顔に、首筋に、貼りつく。チャキチャキ、チャキッ、チャッチャッチャッ――シャワー――そしてドライヤー――
 礼香はスポーツ刈りに化(な)った。頭の軽さがちょっと心細くはあった。チラと隣の夫を盗み見る。自分の髪の方がずっとずっと短い! 夫と目が合う。サトルも横目で妻のカットをうかがっていたのだ。双方照れくさそうに微笑を交わす。
 サトルのカットも終わった。内股で理髪台を去るサトルである。

 店を出るなり、抱き合った。両人とも我慢できなかった。さらに、ディープな口づけ。
 この白昼の路チューに、通行人は驚きや好奇の目をもって報いたが、二人は構わなかった。
「似合うよ」
とサトルは言った。
「かわいい・・・いや、美しい! 潔い・・・何より、セクシーだ!」
「そんなこと言う物好き、貴男だけよ」
「俺だけじゃないさ、絶対に」
「でも、この服とはミスマッチだわ」
 フレンチのレストランに行くので、ドレスアップしてきた礼香は苦笑するが、
「そのアンバランスさが良いんじゃないか。礼香はタッパもあるし、先鋭的なモデルさんて感じだよ」
 サトルは力説する。
「ホントにぃ〜?」
と礼香は確かめるように、自分の頭をひと撫でする。ザラリとした感触。まだどこか実感がわかないでいる。サトルもたまらず、妻の頭に手を伸ばす。撫で、撫で。シャリシャリ。
「気持ちいいなぁ」
と相好を崩す。下半身もえらいことになっている。
 レストランの予約時刻まで、まだまだ時間がある。
「ちょっと、街をブラつくかな。本屋にも寄りたいし」
「私は雑貨をチェックしたいんだけどな。あと靴も見たい」
「靴ならこの間買ったばっかりだろ」
「見るだけよ」
「いつもそんなこと言って、結局は買う羽目になるじゃないか。ダメダメ」
「え〜、それなら、もうサトルさんには頭触らせてあげない」
「わかったよォ〜」
 あっさりと白旗をあげるサトルの腕に抱きつき、
「サトルさん大好き〜! レッツゴー!」
 礼香はゴキゲン。二人、腕を組んで、雑踏の中へ分け入っていく。
 濱中夫妻、今日もアブノーマルながらラブラブです。



(了)





    あとがき

 どうも〜! お読みいただきありがとうございます♪♪
 今回は自作ではあまりない「夫婦モノ」です。しかも最初から最後までラブラブの、ほとんど、ノロケ話やんけー!といったストーリーになっております(^^;) このお話をお読みになって、「作者の人、欲求不満なんじゃないの?」とお思いになられる方がいらしたら、「ギクッ!」といった感じです(笑)明るくほのぼのしてて、かなり好きな作品です(*^^*) 次に夫婦モノを書くとしたら、お坊さんと尼さんのカップルかな〜(笑)
 最近は一か月に一作書ければ御の字というところです。サイト開設の頃は、2作品3作品と同時進行でガシガシ書いていたのが、自分でも信じられない今日この頃。今年は「量」より「質」を重視していくべきなのかな、と漠然と考えております。とりあえず「断髪シーン」の向上を(笑)
 こうして、ネットの世界に場所を頂き、お話を書いていくことが、生活の潤いになっていたりもするので、ゆっくりでも着実に着実に継続していければ嬉しいし、幸せです(*^^*)
 お付き合い下さり、本当にありがとうございましたm(_ _)m これからも懲役七〇〇年をよろしくお願いいたしますm(_ _)m




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