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断髪ジュブナイル〜魔女、聖夜ニ消ユ〜


 北松永町の旧商店街を歩く。
 駅のそばに大型のショッピングモールができてから、この辺りもすっかり寂れ果ててしまった。
 ほとんど全ての店が閉店に追い込まれた。夜逃げ同然に出て行く一家も、後を絶たなかった。
 シャッターを下ろした無人の店、店、店。巻き散らかされているゴミくず。建物や道にスプレーで殴り描かれた卑猥な落書き。
 びゅう、
と空っ風が吹く。その中を、今時珍しい野良犬がヒョコヒョコ横切っていく。
 ――まるで西部劇に出てくるゴーストタウンみたいだね。
 斜谷十和子(はすたに・とわこ)は自分の「ステージ」について、改めてそう思う。
 この場所を歩けば、大抵、ハイエナが群れ寄ってくる。
「よォ、ネーチャン、オレ達と遊ばない?」
 ――ほらね。
 四人組の不良に取り囲まれる。十和子はすぐに四人にあだ名をつける。ヒョットコ、ネパール、金髪、出川。
「ネーチャン、オレたちとキモチイイことしようゼ」
 十和子は喜悦を押し隠し、上目遣いで四人を睨む。
「おお〜、怖っ、そんな顔しないでよ」
「オレたち、紳士だから手荒な真似はしないからさ、安心していいよ」
「そうそう、ネーチャンみたいにカワイイ娘には、特に優しいのよ」
「ただし、金銭欲と性欲を満たしてくれればね。グヘヘヘ」
「おとなしく言うこと聞いてくれりゃ、ここを通してあげるゼ、クックックッ」
 ジリジリと包囲を狭めてくる四人に、
「・・・・・・」
 十和子が口を開いて、何か言った。
「何?」
 聞き取れず、不良――「ネパール」は耳を十和子の口元に持っていく。その耳を思いきり引っ張って、
「汚いブサ顔近づけんなって言ってんだよ、このドブネズミどもがッ!」
 大声で怒鳴りつける。
「ンだとォ、コラア!」
 不良たちは激昂する。
「ちょっとばかりお仕置きが必要なようだな」
「お仕置きが必要なのはアンタらでしょ」
「このクソアマがあぁ!」
 度を失った「ヒョットコ」が十和子に飛びかかる。
 ――待ってましたっ!
 十和子は喜色満面で、
「さあ、踊ろうよッ!」
 後ろでひとつにまとめた長い三つ編みの髪の毛が、バッと生き物のように動き、襲いかかる「ヒョットコ」の顔を、バシッとはたいた。
「わっ」
と「ヒョットコ」が怯んだところへ、すかさず膝蹴りをくらわせる。
「ぐはっ!」
 「ヒョットコ」、撃沈。
「まずは一人」
 ニッと歯を見せて笑う十和子に、
「コノヤロウッ!」
 今度は「金髪」が殴りかかる。
 それを、また十和子は三つ編みを繰って、「金髪」の身体に巻きつかせる。
「ぐわっ」
 「金髪」の身体が持ち上がり、地に叩きつけられる。「金髪」の身体は、ゴムマリのように、コンクリートを跳ねた。口から泡をふいて、「金髪」は気絶した。
「この女、一体何者だ?!」
 「ネパール」と「出川」は十和子の「カミワザ」にたじろぎつつも、攻勢を保ち、ジワジワと十和子との間合いを詰めていく。
 十和子も一歩前に踏み出す。
「ロ分」
 三つ編みの髪が三度動く。
 「出川」の首にグルグルと巻きつき、締め上げる。
「ぎゃあ」
 「出川」の身体が宙に浮く。
「な、なんて馬鹿力だ・・・。く、苦じい〜、ヤバイよ、ヤバイよッ!」
 顔を充血させ、ジタバタともがくが、
「ロ合威也―っ」
 十和子は宙で、その身体をハンマー投げの如く、ブン回す。
「ぐわああぁぁ」
 「出川」の身体は悲鳴とともに、彼方へと放り飛ばされていった。
「ひいっ」
 「ネパール」は腰を抜かしかけながらも、逃げ去った。
「よっしゃ!」
 十和子はガッツポーズ。
「あ〜あ、まだ踊り足りないかな。もうちょっと根性見せなさいよ、身の程知らずどもが」
 倒れ伏す不良に軽く蹴りを入れ、悠々と歩き去った。
 そんな十和子の後姿を見送る二つの影。
「辮締旋風大車輪・・・あの技をまだ継承する者がいたとは・・・」
「知っているのか、金角」

 辮締旋風大車輪(べんていせんぷうだいしゃりん)

 中国清代初期、辮髪の習慣を活用した幻の拳法があった。
 修行には重さ100貫20寸角の雫鋼鉄を吊るし、頭髪と首を鍛えたという。
 この拳法を会得するためには最低3個の雫鋼鉄を持ちあげ自在にふりまわすだけの技量が要求された。
 ちなみに、現代でいう「借金で首が回らなくなる」という表現は、当時雫鋼鉄が非常に高価なため途中で買えなくなり修行を断念した者がいたという事に由来する。

                  民明書房刊 『中国拳法大武鑑』 より

「恐るべし、“北松永の魔女”・・・」
「正攻法じゃ勝てないね」
「随分弱気だな」
「彼我の力量の差を見極めるのも、実力のうち」
「言うじゃないの。じゃあ――」
「“奇襲”しかないかな」
「“北松永の魔女”、ゼッテー倒す」

 十和子の母は武術家だった。中国拳法の達人だった。
 十和子は小さい頃から母に拳法を学んだ。
 天稟があったのだろう、スポンジが水を吸い込むように、母の技を吸収した。
「もうアナタに教えることはないわ」
と母は娘の才能に舌を巻き、十和子を或る老師にひき合わせた。その師匠の膝下、十和子はいよいよ自己の力を研磨した。
 特に自分の長い髪を武器化することに、心血を注いだ。
 ついに秘技、辮締旋風大車輪を会得した。
 十和子は力を持て余した。
 街に出た。
 ストリートファイトの世界に身を投じた。
 不良や喧嘩屋と格闘を繰り広げた。それは若い十和子にとって、血湧き肉躍る経験だった。百戦百勝した。十和子はますます闘争にのめりこんでいった。
 その暴力は、悪いアウトローどもを懲らしめているのだ、という「正義」に裏打ちされていた。
 そんな十和子を、「裏世界」の者たちは
 北松永の魔女
と呼び、恐れていた。

 賑やかな繁華街に出ると、
「よォ、斜谷じゃないか」
と声をかけられた。振り返ると、
「下川先輩」
 上級生の下川修平(しもかわ・しゅうへい)が私服姿で立っていた。
 下川修平の隣には、最近、高校に転入してきた小雪(こゆき)とかいう女生徒が、くっつくように寄り添っている。
「奇遇だな」
 修平とは、彼の妹の結奈(ゆな)を介しての知り合いだ。
「先輩たちこそ、こんなトコでデートですか?」
「ち、違えーよ、ちょっと観たい映画があってさ、そうしたら、コイツ(小雪)が一緒に行くってうるさいから、同行を許可したんだよ」
「立派なデートじゃないですか」
「違えってば!」
「“えいが”はすごかったぞ!」
 小雪は目を輝かせる。
「“てれび”よりずっと大きいのじゃ。音も、どーん、どーん、と雷鳴のように轟き渡っての、ワラワは生きた心地もなかったぞ」
 ――ナニ、このヘンな娘は・・・?
 変わった女の子だと学校でも噂になっているが、実際に相対してみれば、確かに変わっている。
「斜谷」
「何ですか?」
「シューズに血がついてるぞ」
「あれっ、鼻血かな〜?」
 取り繕うとするが、
「お前、また喧嘩してたのかよ」
 修平は苦い顔をする。
「“聖戦”と言ってほしいかなァ」
「いい加減、バイオレンスな日常から足洗えよ」
「なによ、下川先輩、アタシに意見しようっていうんですか?」
「構えをとるな。オレだって、訳知り顔で助言なんてガラじゃねーけどさ、ストリートファイトっていうのは勝ち続けなきゃならない世界だろ?」
「現に、こうして勝ち続けてるじゃないですか。文句あるんですか?」
「だから、構えをとるなって! なあ、斜谷よ、いくら強いヤツだって、いつかは負ける日が来る。それが勝負の世界だろ? 今のうちに勝ち逃げしちまえよ」
「はン?」
 鼻で嗤ってやった。
「アタシが負ける? アリエナイですね」
「いや、そうとも言えぬぞ」
 小雪が話に入ってくる。
「ワラワもな、栄華を極めた平家の世がいつまでも続くと思うていたがの、平家は義経に滅ぼされた。その義経も兄の鎌倉殿によって都を追われた。驕れる者も久しからず、じゃ」
「アンタ、ナニ言ってんの?」
「い、いや、気にしないでくれ」
 修平が小雪の口をふさぐ。
「うぬ、何ふぉするのじゃ」
 手足をバタつかせる小雪に、
「お前は黙ってろ」
と釘を刺し、
「と、とにかくだなぁ――」
 修平は話を軌道修正する。
「斜谷、お前、せっかく可愛いんだし、性格だって優しいトコあるんだし、修羅の世界にドップリ引きずりこまれる前に、フツーの女子に戻れよ。もうすぐクリスマスだぜ? イブの夜にステキな彼氏とイチャイチャラブラブ愛し合うのと、頭の悪い不良とドカドカバキバキ殴り合うのと、どっちが幸せか、お前だってわかるだろ」
「う〜ん、どっちが幸せだろう・・・」
「悩むな悩むな(汗)」
「で?」
「え?」
「話はそれだけですか?」
「ああ」
「貴重なご意見ありがとうございました〜。前向きに検討させて頂きま〜す」
 十和子は小馬鹿にするような口調で、そう言うと、クルリと二人に背を向け、歩き出した。
「待て、無礼であろう!」
 小雪が肩をいからせる。
「修平はそなたの身を案じて、申しておるのじゃぞ」
「よせ、小雪」
 十和子は振り向かず、歩を進める。
 内心、
 ――なによ、あの娘。
 小雪の存在がちょっと腹立たしい。
 ――下川先輩にあんなに馴れ馴れしくしちゃってさ。
 胸がザワつく。
 ――下川先輩もエラソーに、なにが「フツーの女子に戻れ」だよ。
 不機嫌の矛先は、修平にも向けられる。
 十和子は修平に密かに好意を抱いていた。
 ――アイツだったら――
 恋人にしてあげてもいいかな、と密かに思ったりもしていた(「なんで、そんな上から目線なんだ?」by修平)。
 軟弱なヤツだが、人間、自分とは違うタイプに心惹かれることも、多々あるものだ。
 なのに、修平は十和子の気持ちも知らず、変な転入生とベタベタして(本人はカノジョではなく「従妹」だと言い張っているが)、いらぬ世話を焼いてくる。
 十和子は面白くない。
 もうすぐクリスマス。
 修平の口にしたワードが、脳裏をかすめる。
 ――きっと下川先輩はあの小雪と一緒に過ごすんだろうなあ、クリスマス。
 モヤモヤする。
 ――ええいっ! もう一丁、バトってストレス発散だ!
 十和子は荒んだ気持ちで、また旧商店街に続く裏路地へと足を向けた。

 帰宅した娘に、
「またケンカしてきたのか?」
 父は眉をひそめた。
「そんなことだから、クリスマスも近いっていうのに、彼氏もできないんだぞ」
「うるっさいなあ」
 大きなお世話だ。
「いいから店番しろ」
「わかったよ」
 ちなみに父は拳法使いでも何でもなく、非力な一般人だ(だから、武術家の母に頭があがらない)。
 十和子の実家は、「宝船屋」という和菓子屋だった。この辺りでは、かなりの老舗だ。
 三角巾とエプロンをつけ、店に出ると、レジにいた少年が振り向いた。
「あっ、十和子先輩っ! お帰りなさい!」
 丸メガネにダブダブの制服を着ている小柄な少年、なんだか大正時代の丁稚みたいだ。サエナイこと、この上ない。
「ああ、光晴」
 少年は左右田光晴(そうだ・みつはる)、十和子と同じ高校の一年下の後輩だ。「宝船屋」でアルバイトをしている。
「お疲れさん、もうあがっていいよ。後はアタシが店番するからさ」
「はいっ」
と答える光晴だが、何か言いたげに、両の人差し指をこねくって、モジモジしている。
「どしたの?」
「いえ・・・あの・・・もうすぐクリスマスじゃないですか・・・」
「そうだね」
 十和子はげんなりする。どいつもこいつも、クリスチャンでもないくせに、クリスマスクリスマスと、うるさい。
 光晴は勇を鼓したように、
「十和子先輩は・・・その〜、クリスマスは何か予定があるんでしょうか?」
「あるよ」
 頭の悪い不良連中とドカドカバキバキ殴り合い、という幸せがおいでおいでしている。
「で、で、で、で、デートですか?!」
 光晴、どもり過ぎだ。
「まあ、近いかな」
「そうですか・・・」
 光晴は傍目から見ても気の毒なくらいしたたかに、しょげていた。
「どしたの?」
「いえ・・・お疲れ様でした」
 光晴が悄然と去ると、お客様来店。
「いらっしゃいませ〜。あ、美央さん」
「ああ、十和子ちゃん、久しぶりだね」
 常連客の吉良美央(きら・みお)は笑顔で応じる。
「相変わらず綺麗な髪ですね〜」
 十和子は美央の長い髪を褒めた。
 同性の十和子でも惚れ惚れするような長い髪だ。羨ましい。
 ・・・と言うか、
 ――髪以外、羨むトコないもんなぁ。
 顔も十人並みだし、オタクっぽいし、一応大卒だけど、八頭大とかいう無名大学だし、就職活動をすれども、結果ははかばかしくない様子で、最近ではすっかり諦めモードで、
「花嫁修業でもしようかな」
なんて漏らしているし。
 ――就職活動するには髪長すぎだろう・・・。
と十和子は思う。いくら自慢の髪だからって、腰下まであるのは如何なものか。これでは面接のとき、好印象は得られないだろう。
「十和子ちゃんだって髪長くて綺麗だよ」
 美央に褒め返され、
「えへへ、そうですか?」
「いつも後ろで三つ編みにしてるんだね。もっと色々なアレンジ、楽しめばいいのに」
「いや〜、このアレンジが一番なんですよ」
 いつでも戦えるように臨戦態勢。十和子にとっては、髪は「装飾具」ではなく、「武器」だ。
「今日は何にしますか?」
 十和子は営業スマイルで訊く。もし、ストリートファイティング野郎たちがこの接客姿を目撃しても、まさか「北松永の魔女」と同一人物とは信じるまい。

 今日はクリスマスイブ。
 夜を照らすイルミネーション。あちこちのショップから流れるクリスマスソング。プレゼントを下げて足早に家路を辿る中年サラリーマン。ケーキを売るサンタコスのアルバイト店員。街行くカップルたちの足取りも軽やかだ。街中が浮き立っている。・・・ように感じてしまうのは、自分が今夜が「特別な夜」だと認識しているせいだろうか。
 修平の顔が頭に片隅に浮かぶ。
 ――下川先輩は今頃・・・
 小雪と一緒なのかな、と考える。
 ――ええいっ! やめやめ!
 首を振って、暗い想像を吹き飛ばす。
 ――こっちの方がアタシには相応しい「聖夜」だよ。
 旧商店街に足を踏み入れる。
「あれあれ〜、お嬢ちゃん」
 早速カモが現れた。三人組。不良って本当につるむのが好きだ。
「イブなのに一人なの? カワイソ〜」
「本命の男の子にフラれちゃったのかな?」
「うるさいっ!」
 痛いところを突かれ、十和子は感情的になった。
 バッ、と三つ編みの髪を、不良の一人の首にからませ、
「ロ合威也―っ」
 頭上高く振り回す。
「こ、コイツ、“北松永の魔女”だぜ!」
「に、逃げろッ! 逃げろ〜ッ!」
 他の二人は泡をくって、逃走をはかる。その背中めがけ、
「ロ分!」
 十和子は髪で捕らえた不良を投げつける。
「うわっ!」
 不良どもは折り重なって、地ベタに倒れた。
「なんだよ・・・」
 十和子は拍子抜けする。
「せっかく聖夜の“聖戦”だっていうのに、歯ごたえないなあ」
と肩をすぼめたところへ、
「じゃあ、ウチらが相手してあげるよ」
「一生思い出に残るイブにしてやるゼ」
 いつの間にか何者かに、背後をとられていた。二人組だ。
 ――嘘ッ?!
 十和子は狼狽する。
 ――気配にまったく気づかなかった・・・。コイツら・・・できる!
 反射的に応戦の構えをとろうとする十和子の鼻と口が、ハンカチでふさがれる。薬品の強烈な匂いがした。
 十和子の意識は途絶えた。

「はっ」
と気がつくと、廃屋の中にいた。
 ――夢・・・?
 まだ頭が朦朧としている。
 周りを見回す。月明かりで周囲は冴え冴えと見渡せる。
 ガタクタと化したゲーム機が無機的に並んでいる。つぶれたゲームセンターらしい。
 ――アタシ・・・なんでこんなところに・・・?
 起き上がろうとするが、
 ガチャ
 両手がチェーンでコンクリートの柱につながれて、完全にロックされている。これでは、身動きすらままならない。
 ――これは、一体どういうこと?!
 肩に胸に腕に背に髪の感触。三つ編みがほどけて、身体を覆うように垂れこぼれている。
「ハ〜イ、お目覚め?」
という声に、ハッと振り仰ぐと、二人の女の子が、十和子を見下ろしていた。茶髪のパーマヘアーと黒髪ボブの女の子。
 二人とも十和子と同い年くらい。口元に残酷な笑みを浮かべている。どうやら、この連中の仕業らしい。
「アンタたち、何者よっ!」
「どうもォ〜、はじめましてェ〜」
 茶髪パーマが嫌味たらしく敬礼ポーズをとり、十和子の顔を覗きこむようにして、
「金角寺K子でぇす」
「銀角寺G子だ。お目にかかれて光栄だよ、“北松永の魔女”さん」
 黒髪ボブも名乗る。
「二人合わせて、金銀シスターズでぇす」
「知らないわね」
「目下売り出し中なんで、これを機会にお見知りおき下されば幸いで〜す」
「おぼえといてあげるから、この鎖を早く外しなさい」
「はアン?」
 K子が鼻で嗤った。
「アンタ、バカァ?」
「自分の立場、わかってないのかよ」
「どうするつもり? こういうプレイは、アタシ、全然趣味じゃないんだけど」
「こうすんの」
とK子は十和子のお腹に蹴りを入れた。
「ぐっ」
 十和子は痛みに耐えた。強烈な一撃だった。相当な使い手だ。
「顔はやめときな、ボディボディ」
とG子が囃す。
「オマエら、こんな真似してただで済むと思うなよ。後で十倍返し、いや、十億倍返しだッ!」
「“魔女”チャンはまだ自分の置かれている状況が呑み込めてないのかな?」
 K子は今度は十和子の肩を蹴った。
「ぐっ」
 十和子が身をよじらせると、長い髪がバサッと横顔を覆い隠す。
「いいザマね、“魔女”」
 G子がせせら笑う。
「そして、今夜――」
 K子はポケットから、ある物体を取り出す。
「“魔女”の不敗伝説は終わる」
 K子が取り出したのは、大きめの散髪バサミだった。
「まさか・・・」
 十和子の顔から、サーッ、と血の気がひいた。
「その、まさか、だよン」
「やめてっ! やめてぇ!」
「やめないよン」
「ぐっ、ぬっ、このっ・・・このっ!」
 ガチャガチャ、ガチャ、必死になって、チェーンを外そうとするが、無駄な努力だ。
「さぁ、“魔女”チャン、髪の毛チョキチョキしまちょうね」
 K子は十和子の髪をいやらしく撫でると、左頬の位置でハサミを跨がせた。
「やめてっ! やめろってばッ! ちょっとっ! やめてよッ!」
 恐怖に顔をこわばらせ、十和子は懇願するも、
「ダメでちゅよ〜。“魔女”チャンはこの髪の毛で弱い者イジメしちゃう悪い子なんだから、もう二度と悪いことできないように、ママが床屋さんしてあげちゃいまちゅね〜」
「やめてッ! 切らないでッ! お願い! 髪切らないでえぇーッ!」
 哀訴も虚しく、ジャッと二枚の刃は十和子の髪を、深く咥えこむ。
「やめてッ! やめてッ! やめてぇッ!」
「ウフフフ、ダ〜メ」
 ハサミが閉じた。
 ジャキッ
 バラバラとサイドの髪が落ちた。
「きゃあああぁぁ!」
 十和子は悲鳴をあげた。
 頤が露になる。
「や・・・やめて・・やめてよ・・・」
 両眼から涙が溢れ出る。
「あら、もお泣いちゃうのォ? お仕置きし甲斐のない子ねえ」
「やめて・・・もうやめて・・・もう切らないで・・・もう髪、切らないで・・・うっ・・・ぐっ・・・」
「ダメよン、悪い“魔女”チャンにはたっぷりとお仕置きしないとね♪」
 K子はさらに髪を切りすすめる。ザクザク、ザクザク。横髪が断たれ、スッパリと耳が下半分出るほど、切り詰められた。
 十和子の頭部から長い髪が無残にも切り離され、バサリ、バサリ、とコンクリートの床に降り積もっていく。
「ひどい・・・ひどいよ・・・」
 十和子は涙でグショグショの顔を歪ませる。
「いいね、その顔、頂きま〜す」
とG子はスマフォの動画で、十和子のミジメな姿を撮影している。そして、
「後でヨウツボ(Youtubo)にアップしてやるからね。タイトルは『“北松永の魔女”、クリスマスの夜に墜つ』ってね。ストリートファイターたちも溜飲をさげるってモンさ」
「やめてっ! やめてぇ〜・・・うっ・・・うっ・・・」
 しかし、聖夜の悪夢は終わらない。
「さあ、“魔女”チャン、こっち側の髪もチョキチョキしまちょうね〜」
 K子は声を弾ませ、右サイドの髪にとりかかる。
 ジャキッ、ジャキッ
 ジャキッ、ジャキッ
「きゃあああぁぁぁ!」
「ホ〜ラ、見なさい。こんなに切っちゃったよぉ〜」
とK子は50センチはある切り髪を、十和子の鼻先に押しあてる。いつも使っているミント系のシャンプーの匂いが香った。十和子は思わず目を閉じた。歯を食いしばり、顔を背ける。
「見ろっつってんだよッ!」
 K子が不良の本性も露に吼える。
「うっ・・・うっ・・・」
 十和子は逆らえず、おそるおそる薄目をあけ、切り取られた自分の髪を見た。
「ひいぃぃっ!」
「あらあら、“魔女”チャン、いいリアクションねえ。えらいえらい♪ 辛いよね? 悲しいよね? ご自慢の髪がこんなになっちゃって」
 K子はご満悦、切り髪を振って、
「この髪、ゴミ箱にポイしちゃいまちゅね〜」
「マニアに売れば、高値がつくゼ。現役女子高生の髪の毛だから、幾らでも出すさ」
「まあ、G子、お利口さん。そのお金でバッグでも買おうかなあ」
「寿司食おうゼ、特上寿司」
「そう考えると、この髪がお札に見えてきちゃうわね。せっかくだから、いっぱい切っていっぱい稼がせてもらっちゃおうかな」
 言いながら、K子はジョキジョキと右のサイドヘアーを切っていった。
 右の耳たぶが露出した。
 K子は切り髪をかざし、
「大漁、大漁」
「これで特上寿司、何人前食えるかな?」
とG子もハシャいでいる。
「うっ・・・ううっ・・・ひっく・・・うう・・・」
 十和子はもう抵抗する気力も失せ、うち萎れ、髪を切られるに任せている。
「“魔女”チャン、悲しまなくて大丈夫よ。ママが素敵なショートヘアーにしてあげまちゅからね〜。サッパリした頭で新年を迎えまちょうねぇ〜」
 K子は左の髪を目一杯切り刻む。ジャキッ、ジャキッ――
「ストリートファイターの皆さ〜ん、注目注目〜。さあ、“北松永の魔女”についに鉄槌が下る日が来ましたよ〜。激レアなお仕置き動画ッスよ〜。“魔女”泣いております。ボロ泣きです。このブザマな姿を存分にご堪能下さいね〜」
 G子もナレーションを差し挟みながら、撮影を続ける。
 両サイドの髪が、短く切り詰められる。
 右側の髪は耳が半分出るくらい。
 左の髪は耳たぶのみが覗く。
 アシンメトリーなボブカットの型にされた。
 バックの髪はロングのまま、切り残されている。
「こういうの“姫カット”っていうんじゃなかったっけ?」
「彼氏が左利きの人に謝ってこい」
などと金銀シスターズは軽口を飛ばし合っている。
「うっ・・・うっ・・・ぐ・・・も、もう堪忍してぇ〜」
 許しを乞う十和子だが、
「これからが本番なのよン」
 K子もG子も許さなかった。
「ここでアンタを解放したら、絶対、この残った髪で攻撃してくるでしょ」
「しないよォ・・・しないから・・・」
「“北松永の魔女“を完膚なきまでに潰す、二度とこの世界に戻ってこれないようにねン。だから、ホントはバリカンで坊主にしちゃいたいくらいなのよねえ、A○Bの峯○チャンみたく」
「ウチらの優しさをありがたく噛みしめて、おとなしく髪を差し出すが吉ってモンだよ」
「さあ、床屋さんの続き、しまちょうねぇ〜♪」
「うっ・・・うっ・・」
 もはや涙も涸れ果て、十和子は苦しげに嗚咽を漏らすしかなかった。
 K子はバックの髪にハサミを入れた。
 ジャキッ、ジャキッ
 ジャキッ、ジャキッ
 後ろ髪は首筋のところで、押し切られていく。
 バサバサッ
 バサバサッ
と不良や喧嘩家たちを倒し、畏怖させてきた十和子の「兵器」は冷たい床に降り積もる。
「ウフフフ、人の髪を切るってこんなに楽しかったんだね。病みつきになりそう」
 K子は嬉々として、ハサミをふるう。
「これでウチらも、ストリートファイト界に華麗にデビューってわけだね」
 G子も嬉しそうに、「魔女刈り」の様子を動画に収める。
 ジャキッ、
ジャキッ、
と長い後ろ髪がジワジワとなぶるように、切り落とされる。
 ウナジが出た。首筋にあたる冷気に、十和子は戦慄する。
 が、今はもう観念して、目をつぶる。
 そのとき、
「何をしてるんだ!」
 大音声が響き渡る。
 ――え?
 誰かが、このリンチを制止しに来てくれたらしい。
 ――もしかして・・・下川先輩・・・?
 十和子は顔をあげた。
 修平ではなかった。
「光晴・・・」
 左右田光晴が立っていた。息をはずませていた。十和子のピンチに、大急ぎで駆けつけてくれたようだ。
「光晴・・・どうしてここに・・・?」
「上条先輩が――」
 十和子の一コ先輩の上条莉穂子(かみじょう・りほこ)が塾帰りに、旧商店街に入っていく十和子を見かけて、たまたま「宝船屋」から家路に着く光晴に遭遇し、何の気なしに教えてあげたという。虫の知らせというやつだろうか、不吉な予感をおぼえた光晴は、十和子を探して、あちこち駈けずり回ったらしい。
「十和子先輩に、随分ヒドイことしてくれたじゃないですか」
 光晴は深く静かに怒っている。十和子は光晴が怒っているのを、初めて見た。
「なんだ、このチンチクリンが! 正義の味方でも気取ってるのかよ」
 G子が光晴に向かっていく。
「光晴、逃げなさいっ!」
 十和子は叫んだ。
「アンタが敵う相手じゃないよ! 逃げて!」
「そのお気持ち、嬉しいです」
 光晴は微笑をたたえ、生真面目に十和子に一礼する。
「ボクぅ〜、“魔女”チャンの言うとおりになさ〜い。チェリー君は早くお家に帰って、アイドルのアイコラ作って一人Hしてるのがお似合いよン」
「う、うるさいっ! 人がチェリー君だろうが、アイドルのアイコラ作ってようが、貴女方には関係ないでしょうが!」
 ――チェリー君なんだ・・・。アイコラ作ってるんだ・・・。
 チェリー君、いや、光晴はコホンとひとつ咳払いして、気を取り直し、
「こんな非道な行為をした貴女方には、それなりの制裁を加えさせて頂きます。女子とはいえ、容赦はしません」
と言って、メガネをはずし、上着を脱ぎ、応戦の構えをとった。
 ――光晴、メガネとると結構イケメン!
 しかも、普段とは顔つきも雰囲気も違う。「闘う男」のオーラを発散させている。背は相変わらず十和子より低いけど。でもカッコイイ!
「オラッ、チェリー君、お前も“魔女”と一緒にヤキぶっこまれて、Youtuboで全世界の笑い者になりたいのか?」
 G子が光晴に拳を振り下ろす。
「光晴!」
 光晴はいともたやすくG子の拳をかわした。
 その次の瞬間、
「ぐわっ!」
 G子は床に転がっていた。
「くっ・・・チクショウ・・・コイツ、強えー・・・」
「G子! そんなオコチャマ相手に何やってんだよ!」
 K子に叱咤され、
「このガキがあぁッ!」
 起き上がりふたたび光晴に襲いかかるG子。
 だが、光晴は目にもとまらぬスピードの拳を、それ以上の素早さで全てかいくぐり、G子に強烈な掌底をくらわせた。
「うぎゃああぁぁ!」
 断末魔(死んでない死んでない)の叫びを残し、G子は床に伸びてしまった。
 ――光晴、強い! アタシより・・・。
「次は貴女の番ですよ」
 光晴が冷ややかにK子を睨める。
「チッ」
とK子は舌を鳴らし、
「チェリー君、いい? 少しでも近づいたら、アンタの大事な十和子先輩が大変なことになっちゃいまちゅよ〜」
と手にしたハサミの切っ先を、十和子の喉にあてた。
「卑怯者!」
「このクソ魔女! 助けが来たからって、調子付くなや!」
「仕方がない・・・」
と光晴は指先をK子に向けた。
 指先には小さな礫がのっている。
 それをK子に放った。一発、二発。
 二つの礫は見事にK子の右腿、左腿に命中した。
 ビキィイイ
「きゃっ!」
 K子はガックリと床に跪いた。
「あ、足が!」
 K子は狼狽する。
「足が動かないッ! まさか・・・まさか・・・これは・・・この技は・・・」
「そう、翔穹操弾」

 翔穹操弾(しょうきゅうそうだん)

 中国三千年の歴史を持つ漢方医学を応用した拳法。
 長さ5ミリほどの銀製の礫を打ち込むことによって人体の筋肉組織の結節を刺激し、その腱反射で相手の五体を自由自在に操った。
 この技の極意は礫を相手の結節に寸分の狂いもなく打ち込むことにある。
 ちなみに、この技を完全に会得した者は中国拳法の長い歴史の中でも三人とはおらず、至難の業とされている。

                  民明書房刊 『知られざる秘拳』 より

「お、お前みたいなガキが・・・こんな秘技を・・・」
「冷酷無比な人の命をもてあそぶ邪拳、一生使うことはないと思っていた」
 光晴は三発目の操弾を、K子の左腕に飛ばした。
 ビキイイィッ
「ぎゃっ!」
 ハサミを持った左腕が持ち上がり、ハサミはK子自身の茶髪パーマの横髪に、耳上の辺りに跨る。
「ちょ・・・ちょっとォ〜! やめろ! マジでやめろッ! やめてッ! やめてってば!」
 K子は顔面蒼白で、あわてふためき懇願するが、
「因果応報です。貴女も十和子先輩と同じ気持ちを味わいなさい」
 光晴の操弾が、K子の左手に打ち込まれる。
 ビキイイイイッ
「わっ、うわっ! やだっ! やだああぁぁ!」
 K子の指がK子の意思に反して動き、ハサミの刃が閉じた。
 ジャキッ
「きゃあああああぁぁ!」
 K子の左の髪は、ワカメちゃんのように耳の上で、スッパリと切断されていた。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
 K子は放心状態で、失禁し、口をパクパクさせるのみだった。
「お二人さん」
 いつの間にか、入り口に修平と小雪がいた。
「アンタらの間抜けな姿はしっかり撮らせてもらったぜ」
と修平はK子の目の前に、スマフォをチラつかせ、
「もし今後、斜谷たちに妙な真似をしたら、この動画、某サイトにあげさせてもらうからな」
 金銀シスターズ、見事にデビューに失敗した。この後も彼女らの噂を聞くことはなかった。
「左右田が血相変えて走り回ってたから――」
何事かと、後を追ったら、この廃墟に辿りついたという。
「とんだイブだぜ」
と修平は外人ばりに大仰に肩をすくめる。
「こっちはせっかくイタリアンレストランを予約してたのに」
「“まっく”に行くのではなかったのか?」
「お、お前は黙ってなさい」
 光晴がK子のポケットをさぐってカギを見つけ、十和子のチェーンをはずしてやる。
 解放された十和子は一番最初の行き先に、光晴の胸の中を選んだ。
 ガバッと抱きつかれ、
「と、十和子先輩?!」
 光晴は大いに狼狽したが、
「怖かった・・・怖かったよォ〜・・・うっ、うっ・・・」
 十和子は光晴の胸で、ひとしきり泣きじゃくった。
「さぞ辛かったであろう。女子の命をこのように切られて・・・酷いことをする」
と小雪はかぶっていた耳あてつきの毛糸の帽子を脱ぎ、十和子の頭にかぶせてやる。
「助けてくれて、本当にありがとう・・・ありがとう・・・」
「大丈夫です」
 戸惑っていた光晴の顔も、いつしか凛々しくなっていた。
「これからは十和子先輩は僕が守りますから」
 力強く優しい言葉に、十和子の心の中に、温かいものが満ちた。
「光晴・・・光晴・・・」
「十和子先輩・・・」
 抱擁を交わす二人。
「さて、新カップルも誕生したし、せっかくのイブだし、ダブルデートでもすっか」
「ホウ、ワラワと“でえと”していると認めるのじゃな」
「いや、ち、違うぞ! い、今のはいわゆるひとつの、言葉の綾というやつでだな・・・」
 目を泳がす修平に、光晴は笑った。
 十和子も笑った。笑える余裕ができた。
「ウイうぃっしゅやめりくりすます、ウイうぃっしゅやめりくりすます」
 小雪がヘンテコな節回しで、クリスマスキャロルを口ずさむ。
 修平も一緒になって歌いはじめる。光晴も歌う。そして、十和子も。

 We wish you a Merry Christmas,

 We wish you a Merry Christmas,

 We wish you a Merry Christmas,

 And a Happy New Year.

 チグハグなハーモニーは夜を少しだけ明らめ、冬を少しだけ温もらせるように、響き、宙に溶けていった。
「メリークリスマス!」
 四人は手を拍って、聖なる夜を祝った。それぞれの思い、それぞれの祈り、が月明かりの下、静かに、だけど、確かに交差していた。来年もこうやって大切な人と笑顔でいられますように・・・。
「十和子先輩」
 光晴が耳元で囁く。
「うん?」
「僕、十和子先輩はショートカットも似合うと思いますよ」
「そうかな」
 十和子は照れくさそうに微笑んだ。

 聖夜を境に、「北松永の魔女」は忽然と消えた。

 その代わりに、ショートヘアーの美術部員が一人増えた。

「うわ〜、遅刻だよ!」
 静物画のデッサンに夢中になっていたら、約束の時間に遅れてしまった。
 十和子は息を切らせてダッシュする。短い髪が揺れる。
 時計台の下、光晴はいた。相変わらず大正時代の丁稚みたいだ。
 ケータイを取り出して、チラチラと時間をチェックしている。真上に大きな時計があるのに。そんな不器用さが、十和子にはたまらなく愛おしく思える。
 でも、
 ――30分も遅刻だぁ(汗)
 光晴は意外に「亭主関白」、特に時間には厳しい。
 光晴が十和子に気が付いた。
「十和子さん」
 眉間にちょっとシワが寄っている。やばい。お説教だ。こうなったら・・・
 ――笑顔とキスでごまかしちゃおうっと!
「光晴〜!」
 十和子は短い髪を風になびかせ、はちきれそうな笑みで、光晴の許へ駆けていった。


(了)



    あとがき

 長っ!とちょっと焦る年の瀬です。
 まずは、宮下あきら先生、ごめんなさいm(__)m
 「魁!! ○塾」の技を流用してしまった。。。というか、リスペクトです! オマージュです! 自分、「魁!! ○塾」の大ファンなんです! だから許して下さいっ!
 さて、謝ったところで――
 断髪ジュブナイルの第三弾でございます。
 「南松永町の平日」「切らずの市弥」「Happy Happy Bridal Cut!」に連なる「クリスマス物」でもあります。
 今回、初めて、ハサミでのハードな強制断髪物に挑戦してみました。最初は大丈夫か心配でしたが、書き上げてみて満足しています(^_^)それに懐かしい面々がまた書けたことも嬉しかったです♪
 お付き合い下さり、感謝感謝です!!
 今年も本当にありがとうございました。
 2014年が皆さんにとって素晴らしい年になりますように、お祈りしています♪




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